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第74話 クリスマスディナーを楽しみましょう

 希逢にベッドに縫いつけられてキスの雨が降る。由羽はそれを甘んじて受け止めていた。事後のふわふわとした甘い雰囲気にあてられて、由羽は少し眠くなってきたところだった。そのとき、ぐーぎゅるると由羽のお腹が鳴り響いた。 「あっ……う」 「はは。そりゃ腹減るよな。まだ晩飯食ってねえし」  恥ずかしくてお腹を手のひらで隠していると、希逢に身体を起こされる。手のひらをしっかりと握り立ち上がらせてくれる。その腕の頼もしさに縋っていたくなる。 「腰大丈夫か。歩ける?」  そっと腰を支えられながら歩く。とてとて、と由羽の足取りはおぼつかないが廊下を渡りリビングのソファに辿り着くことができた。 「今から料理するから、テレビでも見て待ってろ」  そう言ってテレビのリモコンを手渡される。「俺も手伝うよ」と言いたかったが、立っているのもやっとな自分では希逢の足でまといになりかねないと思い言葉を飲み込んだ。無音なのも気を遣ってしまうのでテレビを付ける。クリスマスミュージックフェスティバルという名前の音楽番組が放送されていた。街中でよく聞く音楽や、クリスマスにぴったりなラブソング、最近流行っているアニメの主題歌などが流れていた。それらをぽんやりと見つめていると、希逢がキッチンでカチャカチャと物音を立てていた。ソファに沈み込みながらその生活音を聞いていると、瞼が重くてうとうととしてしまう。テレビを消して自分の重力に従いソファに身体を預けた。心の中で「手伝えなくてごめんね」と希逢に謝りそのまま瞳を閉じた。  何分ほどそうしていただろうか。意識の外からぼんやりとした声が聞こえてきた。とても大切な人の声だと思った。由羽はゆっくりと意識を浮上させる。身体が何かに包まれているように温かい。ぽやぽやとする意識で目を擦る。 「っわ」 「ん。おはよ」  由羽はソファの上で希逢に膝枕をされていた。身体には白くてぽこぽこしているブランケットがかけられている。由羽が寝落ちしてしまった後に希逢がかけてくれたのだろう。そういった気遣いが嬉しくてたまらなかった。ぽすぽすと頭を撫でられて、くぅんと声を出してしまいそうになる。由羽は思い切って希逢の膝にすりすりと頬を寄せた。頭上から「ふは」と笑い声が降ってきた。 「なあに? 甘えた由羽しゃん」 「ぬくぬくであったかいんだもん」  ブランケットを胸元まで引き寄せて呟くと、「はいはい」と子どもの相手をするみたいに希逢が相槌を打ってくれる。 「そうかそうか。おっきな猫ちゃんみたいに甘えてるな。飯の準備できたから食べるか」 「あっ、ありがとう。手伝えなくてごめんね」 「いいよ。俺がしたいだけだから」  そっと手を引かれダイニングテーブルへ向かうとそこにはーー。 「わあ。すごいご馳走」 「即席で作ったからあんま自信ないけど……レシピ通り作ったから問題ないはずだ」  テーブルの上にはドリアやチキン、シーザーサラダにナゲットなどが用意されていた。全部ほかほかで温かそうだ。由羽は口の中に唾液がたまるのを感じてごくりと唾を飲み込む。

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