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第75話 推しDomにCollarを贈られました

「いただきます」  由羽が両手を合わせて呟くと、希逢がくすくすと微笑んだ。 「さあお食べ」  シーザーサラダを小皿によそってくれた希逢に感謝しながら口に運ぶ。シャキシャキのレタスと香味高いベビーリーフの香りに包まれて食欲が進む。クリスマスツリーをイメージしたような色合いの野菜が並んでいる。真っ赤なミニトマトを口に含めば甘くて、ついつい2個目3個目と口にしてしまう。そんな由羽の様子を希逢はにこにこしながら上機嫌で眺めていた。 「そんな美味い?」  シーザーサラダにがっついてる由羽を見て希逢が笑いかけてくる。由羽はこくこくと何度も頷きこう返した。 「希逢シェフのお料理とっても美味しい。ほっぺた落ちちゃいそう」 「褒めすぎ」  由羽の言葉に希逢はそっぽを向いて目を伏せた。あ、恥ずかしがってる。由羽は心の中でにまにましながら愛おしい人の照れている姿を目に収めた。心の中でシャッターをきる。この幸せな瞬間も1秒たりとも忘れたくなくて。  クリスマスディナーを堪能したあとで、由羽は用意しておいた包みを希逢に手渡した。 「誕生日、おめでとう」  コロンとした手のひらサイズの四角い包みはクリスマス柄の包装で包まれている。希逢は目を見開いてから、包みごと由羽の手をとりぎゅっと抱き寄せた。希逢の心臓の位置に由羽の手のひらがあたる。そこはどくんどくんと鼓動していた。 「ありがとう。開けていいか?」 「もちろん」  丁寧に包みを取ってから四角い箱を開ける希逢の反応が気になる由羽はどきどきとその様子を見つめていた。箱の中からきらりとしたものが見えた。指でそっと持ち上げると、それは天井の光に照らされてきらきらと輝く。 「すげえ綺麗」 「よかった。このネックレス、希逢くんにぴったりだと思って。付けてあげる」  希逢の指からシルバーのネックレスを受け取り、首元にかける。そっと静かに後ろで結んだ。はらり、と希逢の首元の髪の毛が指先にあたる。その艶びた黒髪に後ろからそっとキスをする。すると希逢はぴくりと肩を揺らして由羽を仰ぎ見た。 「それ反則」  むくれている希逢がその瞬間は年相応の18歳に見えてついつい構ってしまう。 「ふふ。ごめん。そんなにほっぺ膨らまさないで。かわいすぎるから」 「む」  希逢は頬を紅潮させてから姿見に映る自分の首元を見つめた。指先でなぞるようにネックレスに触れる。シンプルな装飾は銀の糸が垂れているみたいだ。やはり由羽のセンスは素敵だと思いながら、希逢も用意していた包みを由羽に手渡す。まさか自分がもらうと思っていなかった由羽はたじたじとしてしまう。 「俺からのクリスマスプレゼント」 「わ……嬉しい。ありがとう」  わくわくとした手つきで包みを開ける。両手を広げたくらいの大きさの箱をそっと持ち上げた。中に入っていたものを見て由羽の瞳が瞬く。希逢はその表情を静かに見つめていた。 「希逢くん。これ……」  由羽は目を見開いてそれを見つめる。瞳の中に光の粒がたまり目尻から溢れていく。 「Collarだ。俺の気持ちを伝えたくて」  Collarというのは2人がmateになった証だ。そしてDomがSubにCollarを贈る行為をClaimと呼ぶ。それは、DomとSubが正式な恋人となった証明である。そしてCollarを贈るという行為は「貴方を一生大切にする」という結婚を意味するメッセージである。DomからSubへ贈るのが通例である。それは首輪の形をしていて、DomがSubの首に付ける。デザインは様々で今回由羽が希逢からもらったCollarは白い革ベルトのチョーカーだった。ハートと十字架のチャームが揺れている。

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