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第96話

◇◇◇  あれ、お布団に誰か入ってきた。希逢くん? 配信終わったのかな?  俺は眠気まなこで寝たフリをしたまま目を瞑る。すると、背中越しに抱きしめられた。ぎゅーっと力強く抱きしめられて、息が苦しくなるくらい嬉しい。もっとして、とばかりに身体の力を抜く。ほんの少し、身体を希逢くんの傍に寄せた。 「ゆぅは。起きてんだろ?」 「……」  希逢くんの掠れた声に名前を呼ばれてもつんとして振り返らない。今日くらいいいよね。拗ねたって。レンレンなんて知らない。コラボだなんて聞いてない。そんな俺の心を見透かしたかのように希逢くんが意地悪な声で囁く。 「ん? どうしたの。嫉妬してる? 俺がレンレンとコラボしたから」  つつー、とうなじを舌先で舐めてくる。びくん、と小さく肩が跳ねてしまった。起きてるのバレちゃったかな……、、  ん? なんで俺が配信見てることわかったんだろ?  新たな疑問に頭をぎゅうぎゅうにして考え込んでいたら、後ろからきゅ、とTシャツ越しに胸をつままれた。 「ひゃっ」  思わず短く声が出てしまう。 「ほら。やっぱり起きてる。んー、ここじゃねえか。この辺かな」  きゅ、と再度希逢くんの人差し指と中指が僕の胸の突起に触れた。先端をつままれ腰に甘く響く。ミルククラウンのように気持ちのいい振動が伝わってきた。 「あっ……ん」 「お。当たりー」  そのまま、もにもにと胸を両手で鷲掴みして揉んでくる。俺はイタズラしてくる希逢くんに観念して涙目のまま後ろを振り返った。 「いじわる、やです……」  俺の顔を見てさすがにやりすぎたと思ったのか、希逢くんは目を見開いたまま停止したと思ったら、次第にくすくすと笑い始めた。 「なに? なんで急に敬語?」  俺はむっすう、としたまま押し黙る。 「だからなんなんだよ。っやば、その顔ひまわりの種でほっぺぷくぷくのハムスターみたい。由羽かわいいな、ほんと」  俺の表情や態度が希逢くんの笑いのツボにぴたりとはまってしまったらしく、ついにはお腹を抱えて笑う始末。そんな彼らしい反応に、嫉妬していた気持ちがぷしゅーと風船から空気が抜けていくように和らいでいった。 「レンレンって誰。それになんで僕が配信見てたこと知ってるの?」  ちょっとだけいつもより声音を低くして怖い声を出したつもりだ。希逢くんはくくく、と喉の奥で笑いを堪えてから俺の伸びた襟足に人差し指を巻き付けて耳元で囁く。 「配信中に見えてんのー。閲覧してる人のアカウントのアイコン。由羽のは猫のアイコンだろ?」 「えっ……なっ……なんで!?」 「わかりやすすぎ。もー、拗ねちゃまなんだから」  よしよしと頭を撫でられて悪い気はしない。それよりも、アイコンで俺だと身バレしていたことが恥ずかしくて穴があったら入りたいたぬきです。 「由羽は猫が好きなんだろ? 同棲してわかったことだけど、猫モチーフの鏡とかくしとか、コスメポーチとか……猫を侍らせてます? ってくらい猫アイテムと同化してるんだよ。由羽は」 「……」  人から言われて初めて気づいた。そんなに俺って猫アイテムを持ちすぎてたんだと。 「まあいいよ。そんな拗ねちゃま由羽も愛してあげる。それが由羽しゃん専属Domの俺のお仕事ですから」  きゅん、と胸が高鳴ったのはいつものこと。 希逢くんの一言一句、行動の全てが俺を愛していると伝えてくれているみたいで多幸感で頭ふわふわになるから。そこで俺からも上手い言い返しを思いついたので自信満々に言ってみた。 「俺は希逢くん専属Subとしてしっかりお世話するね」  すると希逢くんの笑顔が一瞬消えて、途端にぼっと音が鳴るくらい顔が真っ赤になって耳たぶも赤くて挙動がおかしくなった。もしかして、照れてるのかな? 「……っあ、明日もツナマヨおにぎり作って。……3個。爆弾みたいなおっきいやつがいい。……学校持ってく」  ぎゅーっと俺の腕の中に頭を突っ込んで、ぽつぽつ話してくれる希逢くんが普段とのギャップがあって思わずよしよししたくなる。 「うん。自分からお願いできて偉いね。希逢くんいい子」  さっき作ったツナマヨおにぎり2個を配信後に食べてしまったらしく、美味しかったからリピしたいらしい。こういうところはまだまだ高校生っぽくてかわいいなあ……。 「もう寝る。それと、今度から誰かとコラボする時は由羽にちゃんと言う」 「うん。そうして」  もごもご喋る希逢くんを見ていたら眠気が強くなってきて、今日はそのまま希逢くんの頭を抱きしめる姿勢で眠ってしまった。いつもは俺が希逢くんに抱き寄せられて眠ることが多いんだけど。  たまにはね。 俺の彼氏Domはとてもかわいいいい子なんです。

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