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12 お誘いを受けた
「は……!?」
俺は堪えていた赤面がボンッと出てしまう。
人前でチョーカーがどうのと言われるのは、人前で「今日の下着セクシーなヤツだよね」と言われるような恥ずかしさがある。この感覚は、Ω独特のものなのだろうか? いやでも裕也くん、デリカシーを持ってくれ!
「ちょっ、こっちに来い! 田中、あとよろしくな!」
俺は裕也くんの手を引っ張って慌てて交番の奥へ連れ込む。
「あ、ハイ」
この俺の動揺ぶりに、田中はきょとんとしている。よかった、Ω事情に疎い田中しかいない時で。これが東たちのいた時だったら、どんな風にからかわれたか。Ωにとってチョーカーっていうのは面倒で、大事で、繊細なモノなんだよ!
俺は奥の休憩用の和室の戸を閉めて、裕也くんをじろりと睨む。
「ククッ、照れる高瀬さんかわい」
すると裕也くんは俺の頬をツンツンと突いてくる。
「裕也くん、年上をからかうんじゃない」
「恋人を愛でたんだけど」
俺がふくれっ面で文句を言うのを、裕也くんがかわす。それに、俺は怒り続けることができないでいた。いい年の大人が、「かわいい」と言われて胸がキュンとするんだから、俺もどうかしてしまったな。
「コレ着けてあげるから、機嫌なおして?」
裕也くんがそう言って俺の首に顔を寄せてスンスンと臭いを嗅ぐ。こら、くすぐったいだろうが!
「じゃあ早く、してくれ」
俺は裕也くんの前に胡坐をかいて座ると、ネクタイを外してシャツの襟元を緩めた。裕也くんもすぐに俺の背後に座ってから、手早く今着けている支給品チョーカーを外して、床にポイッと放ると、露わになった首筋を指先で撫でる。
「やっぱりね。病院支給品、微妙に高瀬さんにはサイズ合ってなかったから、こすれてちょっと赤くなってる」
裕也くんがそう教えてくれた。確かに、首が痒かったんだよな。
「先に薬塗るから」
そう言って、こちらも買ってきてくれていた軟膏を首に塗ってくれる。
「んっ」
その時、裕也くんの指先がうなじをサワサワと悪戯に障るのが、くすぐったい上に変な感じがしてくる。俺が身体をよじると、その指が襟から下に侵入するのを、慌てて掴んで止める。こら、乳首をつまもうとするんじゃない!
「裕也くん、悪戯禁止!」
「ちぇっ」
裕也くんが口を尖らせてから、やっとチョーカーを付け替えてくれた。
「肌触りがいい」
チョーカーが当たるあたりがザラッとしないし、緩くもきつくもない。フィット感がちょうどいいチョーカーなことで、俺も首輪感を感じなくて済む。
「わざわざ持ってきてくれて、ありがとう」
「俺も自分のΩに、いつまでも雑な支給品を着けてほしくないし」
背中のチョーカーのすぐ下の肌を、チュッと吸われた。
「んぁ、だめ」
ゾクッと背筋を震わせてしまった俺は、思ったよりも甘い声が出てしまう。こら、悪戯は禁止だと言っただろうが!
「ヤりたくなった?」
そう囁いてくる裕也くんは、ここが交番なことを忘れていないか? そういう俺も裕也くんの唇の感触に感じてしまって、目をちょっと潤ませてしまっているから、睨みに迫力がいまいち欠けているに違いない。
くそぅ、「運命」レベルの相性って、こういうのが困る。
「ね、夜店に来てよ、ウチに泊ろ。俺がヤりたい」
こら、繰り返すが交番でヤりたいとか言うんじゃない。そして声をひそめなさい、田中に聞こえる!
けれど、俺としては提案が迷惑なわけではない。
「俺は朝、早いぞ?」
小声で言う俺に、「そのくらい、いい」と裕也くんが背後から抱きしめてくる。
「俺、夜勤だから。休憩中にヤッてから、高瀬さんを見送って寝る」
裕也くんが嬉しそうに話すが、え、なにその恥ずかしいスケジュール。店から一緒に上がって裕也くんだけ降りてくると「ああ、今セックス終わったんだ」って店のコたちに思われるってことだろう? 恥ずかしくて死ねるんだが!?
「~~!」
俺はちょっとだけ悩んだものの、結局俺も欲を抑えられず、裕也くんの提案に乗ってしまうのだった。
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