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10.Bump~運命の出会い
その様はまるで、涙がオレたちスラム街に生きる人間で、絨毯がこの街に住む人間のように見える。
飢えたオレたちの命が、身分ある奴らに吸い取られていくみたいだ……。
うつむいて泣いていると、頭上から男の声が落ちてきた。
「……すまない、軽率な行動だった」
そのとたん、オレは自分の耳を疑った。
だって命を助けてもらった相手に礼すら言っていないどころか、オレは男を愚弄した。
せっかく差し与えようとした宝石を、オレは弾き飛ばした。
下民が、自分よりもずっと上の位にいる人間の拒絶した。
それは、男のプライドを傷つけることになるだろう。
だから男は、『なんて不作法な奴なんだ』って、怒るに違いない。
すくなくとも、オレはそう思っていた。
それに、しょせん金持ちは金持ちだ。
オレの苦しみを言ってみたところで、どうせ何もわからない。
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