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5.Idiot~名前
今までの説教がまったくもって功を奏していないことを知ったオレは、がっくりと項垂れた。
「アティファは優しいね。それにとても可愛い」
「っはぁっ!?」
『可愛い』
それはオレにとって、侮辱(ぶじょく)以外の何物でもない、禁句に近い言葉だ。
――本来なら。
それなのに……。
オレ、おかしい。
ヘサームに禁句を言われると、胸がドキドキする。
どうしてだろう。
気のせいか、顔も熱いように感じる。
なんだか恥ずかしくて、ヘサームの顔をまともに見られなくなったオレは、視線を逸 らし、絨毯の上にすべらせる。
それでヘサームから逃れられると思ったのに……。
「照れてる顔も可愛いね」
頭上からは、またもや普段なら侮辱とも取れる言葉が落ちてくる。
だけどコイツの言葉に嫌味は感じないし、やっぱり腹も立たない。
それどころか、余計に顔が熱くなる始末だ。
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