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7.Refusal~涙の理由
けっして人前で泣くまいと決意していたのに、もろくも崩れはじめる。
目頭が熱くなって、涙があふれてきた。
「オレ……ジャンビーア、取られたんだ……」
気がつけば、胸の中に押しとどめていた悲しみを、言葉に乗せて話していた。
「父さんの形見だったのに……。今ごろ、どこかに売られてるかもしれない。大切なものだったのにっ!!」
……ジャンビーアはオレのすべてだった。
父親を早くに亡くしたオレにとって、父さんのジャンビーアは特別だったのに!!
「……そう」
女性は何も言わず、ただ頷くばかりだ。オレの頭を撫でる手だけが止まらない。
優しくされて、涙腺が一気に崩壊した。
「っぅ、うわあああああんっ!!」
オレは、どこの誰だかわからない女性に身をゆだね、泣きじゃくった。
――その日から、へサームのはオレの前に姿を見せなくなった。
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