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6.Refusal~涙の理由
アバヤっていう黒装束に身を包んでいた。
顔は、黒装束に隠されているから見えないけれど、目が大きいから、きっと美人だと思う。
この国では、いい家柄であればあるほど、昔から言い伝えられている教えを守り、黒装束を身につけるんだ。
いつもなら、放っておけと罵るオレ。
だけど、相手は女性だ。
そんなこともできるはずもない。
オレがただ黙っていると、女性の手がすっと伸びてきた。
「っつ!!」
たったそれだけのこと――。
だけど、体が強張ってしまった。
これほどまで触れられるという行為に怯えているんだ。
それだけ、人買いに捕まったあの日がオレにとって恐怖になっていた。
「かわいそうに。よほど怖い思いをしたのですね……」
優しい声音と、オレの頭を撫でるあたたかな手――。
恐怖で萎縮 してしまった体に染み渡っていく……。
「っふ……」
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