93 / 158
5.Refusal~涙の理由
「っひ……っくっ……」
誰もいない憎き兵士の部屋で、オレはベッドのシーツに顔を埋め、声を殺して泣いた。
――その日から、あんなに食い物を求めていたオレの姿が嘘のように、何も口にすることなく、涙を流して過ごす日が続いた。
――翌々日。
オレの元に、新たな刺客が送られてきた。
飲まず食わずがずっと続いたから、さすがのヘサームも焦ったのだろう。
自分の家で死人が出たら大変だもんな。
その刺客っていうのが、これはまたおかしい。
だって、そいつは兵士でもなく、男でもない。
「なぜ、そのように悲しそうなお顔をなさっているのですか? わたしでよかったら、理由をお聞かせいただけませんか?」
穏やかな口調の、女性だった。
声質からして、年は60くらいだろうか。
若干、震えるような声のクセがあった。
彼女の身分はオレたちよりも上なのだろう。
ともだちにシェアしよう!