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5.Refusal~涙の理由

「っひ……っくっ……」  誰もいない憎き兵士の部屋で、オレはベッドのシーツに顔を埋め、声を殺して泣いた。  ――その日から、あんなに食い物を求めていたオレの姿が嘘のように、何も口にすることなく、涙を流して過ごす日が続いた。  ――翌々日。 オレの元に、新たな刺客が送られてきた。  飲まず食わずがずっと続いたから、さすがのヘサームも焦ったのだろう。  自分の家で死人が出たら大変だもんな。  その刺客っていうのが、これはまたおかしい。  だって、そいつは兵士でもなく、男でもない。 「なぜ、そのように悲しそうなお顔をなさっているのですか? わたしでよかったら、理由をお聞かせいただけませんか?」  穏やかな口調の、女性だった。  声質からして、年は60くらいだろうか。  若干、震えるような声のクセがあった。  彼女の身分はオレたちよりも上なのだろう。

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