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9.Refusal~涙の理由

 あんなにオレが罵声を浴びせたり拒絶していたのに、それでもヘサームは気にすることなく毎日のように顔を出していた。  だけど今はまったくそれがない。  これはいったいどういうことだろう。  ――いやいや、オレにとって、ヘサームなんてどうでもいいことだ。  オレを女みたいに扱った男の顔なんて見たくもない。  ……それなのに。  なぜか、ヘサームの顔を見ないと胸が痛む。  もしかしてヘサームは、簡単に体を開くオレのことを気持ち悪いと思ったのか?  体を重ねて、浅ましくもっと欲しいとそう告げたオレのことを醜いと感じたのかもしれない。  あまりの気持ち悪さに、顔も見たくないと、そう思ったのかもしれない。  だとしたら、オレは……。 「あなたは、ヘサーム殿がお嫌いですか?」 「えっ!?」  ビックリした。  だって、ヘサームのことについて考えていたところだったんだ。  オレはほぼ反射的に、うつむいていた顔を上げると、バシラさんの大きな目に悲しみが宿っていることに気がついた。 「わたしは、あの方の乳母なんです」

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