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10.Refusal~涙の理由
「えっ?」
突然のカミングアウトに、ビックリだ。
いや、オレ自身、なんとなく、バシラさんとヘサームとは深い関係なんだろうと思っていたけどさ……。
まさか乳母だったなんて驚きだ。
だけど、どうしてそれをオレに告げる必要があるんだろうか。
彼女がヘサームの乳母だからといって、オレがバシラさんをどうこうできるはずもないのに……。
バシラさんの意図はどこにあるんだろう。
オレは、そんなことを考えながら、バシラさんが話すのを大人しく聞くことにした。
「ヘサーム殿のお母上様は、貧しい平民の家柄でございました。けれども、お母上様は心身ともに、とても美しく、村一番の美女とうたわれておりました。ある日、前王は、ヘサーム殿のお母上様の噂を耳にして、城下に足を運ばれました。そして、そんなお母上様を、一目見て、たいそう気に入り、側室としてお側に置かれることにいたしました」
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