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20.Refusal~涙の理由
「……んっ」
気がつけば、オレの口はヘサームに塞がれていた。
「――見たかったのは、けっして涙で泣き腫らしたものなどではなく、笑った顔……それだけだったのに、な……」
リップ音がするのと一緒に、唇が離れると、ヘサームは苦しそうに顔に皺を寄せ、乱れる息でそう告げた。
ヘサーム? なんで?
なんで今、オレにキスしたの?
バシラさんが言ったとおり、オレのことが好きなの?
本当に?
もし、そうだとしたら……。
自由だと言われて、『はいそうですか』なんて、言えるわけがないだろう?
だって、ヘサームはオレのために、身の危険を顧みず、ジャンビーアを取り返してくれたんだ......。
ヘサームがオレと顔を合わせなくなったのは、オレのジャンビーアを奪い返すためだったってことだろう?
それって、それって……。
ヘサームはオレを嫌っていたわけでも――男に組み敷かれるオレを醜いと思っていたわけでもなかったってことだよな?
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