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19.Refusal~涙の理由
オレを拘束していた手錠から小さな金属音が聞こえた。
それは、オレの右腕が解放された瞬間だった。
「君は自由だ。どこへでも好きなところに行け……。だが、もう少し、薬の効果が消えるまでは安全な場所にいた方がいい。こんな状態の俺では、もし、過激派の連中が襲撃してきたとしても、お前を守ることはできそうにないから……」
虚ろな目は、焦点があっていない。
痛みのせいなのか。以前のような力強さを感じられない。
息が乱れ、玉のような汗を全身にびっしょりかいている。
とても苦しそうだ。
『守る』
たしかに、ヘサームはそう言った。
あなたは本当に、オレを守るために、こうして鎖で繋ぎ止めていたの?
もし、それが本当だというのなら……。
ヘサーム、オレは……。
「ヘサーム……」
ヘサームに手を伸ばせば、さっき鍵を外した手がオレの顎を掬った。
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