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4.Passion~アティファ

「……アティファ。流されているのか?」  オレの頭は長いキスのおかげでボーッとする。  そんな状態の中、ヘサームの声が冷たく響いた。  火照りつつあった体に冷水をかけられるみたいに……。 (は……あっ?) 「――っ、んなっ!!」  ヘサームのその一言が癪にさわった。  だってそれって、ヘサームはオレのことをどんな相手でも簡単に体を開く淫乱野郎だって思ってるってことだ。  媚薬なんてもう抜けきってる状態だ。 (誰が好きじゃない人以外に体を開くかよっ!!)  オレはヘサームだからキスを許したんだ。  他のヤツなら、ぶん殴ってるところだ。 「ヘサームとなら、キスしてもいいって思った。これはオレの意志だ!」  好きな人にオレの気持ちを疑われてすごく悲しい。  オレは泣きたくなるのを我慢して、目尻をつり上げる。  挑むようにヘサームを睨んだ。  ――ああ、だけどヘサームは、もしかすると淫らなオレが気に入らないのかもしれない……。  ヘサームはきっと、出会ったばかりの頃の純粋なオレが好きなのかもしれない。  今のオレは……他の男に体を開いたから――……。

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