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1. 番外編~Passion

 いつも静かなんだけど、今日はいつもより、ずっと静かな気がする。  聞こえるのは、オレの、ドクン、ドクン、と鳴る心音。  それと……。 「……アティファ」  オレを呼ぶ、ヘサームの声だけ……。 「あ……」  ベッドに押し倒されたオレの真正面には、すべてを見透かす整った双眸がある。  いつもは冷静なヘサームは、だけど今は違う。  黒水晶のような、淀みない目は欲望を宿し、彼が男だということを、あらためて認識させられる。  ……トクン。  ヘサームの視線とオレの視線が重なれば、心臓が大きく跳ねた。 「……アティファ」  もう一度、ヘサームがオレの名前を呼ぶ。 「……んぅ」  間もなくして、薄い唇によってオレの口は塞がれた。  オレは深い口づけを受ける。  ヘサームによって、オレが着ていた衣服のすべてが脱がされていく。  性急な行動は、いつもの冷静なヘサームらしくない。

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