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2.番外編~ヘサームとワーリー王

 ヘサームは自分に言い聞かせるようにそう言うと、下げていた頭を戻し、ワーリー王と視線を交えた。 「そして、腹違いの兄でもある」  ――違うか?  そう言うワーリー王の目はどこか挑戦的だ。ヘサームは首を振り、大きく息を吐いた。  しばしの沈黙が続く。  しかし、この沈黙さえも、常日頃のワーリー王とヘサームのやり取りだった。 「小耳に挟んだのだが、ここ最近、抜け荷が多くなっていると聞く」 「申し訳ございません。急ぎ、その件の収束を図ろうと動いているのですが、なにぶん、奴らはその時々で場所を変更しているらしく……」 ヘサームはふたたび顔を伏せ、王に謝罪する。 「ふむ」 「盗人も出現するとか?」 「――――は?」  公務について責められるのかと思いきや、しかし、思いもよらない言葉が返ってきた。  ヘサームは眉根を寄せ、ふたたび顔を上げた。

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