156 / 158
3.番外編~ヘサームとワーリー王
「なんだ、お前知らぬのか? 何でもその盗人、かなりの腕前でらしく、我が兵もいくらかやられたとか。少女のような容姿なのに、たいそう腕が立つと、巷では評判だぞ?」
ワーリー王の薄い唇の端がつり上がっている。どこか楽しそうに話す彼は、本当に一国の主であろうか。
常に冷静沈着。――そして何より、威厳を漂わせている彼であっても、兄の前であれば本性が出る。
ワーリー王に秘められた内面は、おそらく限られた者にしか知らない。
彼は好奇心が旺盛だった。
だからこそ、といえばそうなのかもしれない。
今まで、先代の王たちが為し得なかった様々なことを思いつき、実行に移す。
――たとえば、そう。
今までは血筋を重んじていた重役たちに、才ある者を昇格させるように命じたのも、彼だった。
時にその好奇心は役に立つ。それは認める。しかし、である。
ヘサームにとって、今はそうではない。
ともだちにシェアしよう!