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4.番外編~ヘサームとワーリー王

 というのも、王の性格を隅々まで熟知しているヘサームは、余計なことを考え出さないようにと、巷の話は兵士たちに固く禁じているからだ。  ――にもかかわらず、王はそれを知っている。  ともなれば、答えはひとつしかない。 「……王、まさか。また貴方は宮殿を抜け出されたのですか?」  違うと言って欲しい。  ヘサームは、心のどこかで、自分の考えを否定してくれるのを待っていたが、ワーリー王はうなずくばかりだった。 「そのようなかたいことを申すな。何事も勉強だろう?」 「なりません!! 王! 貴方はっ!!」 「『一国の王であらせられます』だろう? だがな、ヘサーム。わしが玉座におっても、民の声は直接耳には届いてこぬ。よりよい国を作るには、やはり、民の声を聞かねばならない。 なあ、ヘサーム。美少女とうたわれるその盗人に、一度会ってみたいとは思わないか? わしは会ってみたいぞ!!」

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