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5.番外編~ヘサームとワーリー王

 ……()くして、王のその時の戯れにも似た言葉が、ヘサームのその後を大きく変えることになる。  それは、ヘサームの隊が街の巡回を任された日だった。  ぎらついた太陽はいつも以上に輝き、肌を焼くような暑さの中――。 「いたぞ、盗人だ!!」  危機感を持つ兵士たちの声がさほど遠くはない街の市場から聞こえてきた。  ヘサームは、市場へと急いで駆けつけたまさにその時、人影を目にする。 「誰が待つかよ、ぶぁあかっ!!」  ふっくらとした唇から赤い舌を突き出し、追っ手から華麗に逃げる少年は、いつの日だったか、王が言ったとおりの美少女とも見まごうほどの可愛らしい少年だった。  まるで、天女が舞うごとく、軽やかな身のこなし。 「……可愛らしい」  愛くるしい彼を見た瞬間、ヘサームの胸は、初めて恋を知った少年のように高鳴ったのであった。 *えんど*
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コメント

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私はディズニーが大好きです。ということで、アラジンを見ていて、ふいに書きたくなったのがこの作品。 楽しく書かせていただきました。 貧しい家に生まれたアティファを待ち受けていたのは、凛々しく、そして間抜け? な王子様。 ちょっとばかし抜けている王子様を、主人公のアティファがどんどんツッコミを入れる。 そんなコメディーも入れたくて、だけども切ないシーンやどぎまぎするような場面も入れたくて……。 と、切ない話が大好きな私は、いつものごとくこんな感じで完結です。 番外編は他サイトさんでリクエストをいただき、調子に乗ってどんどん書いてしまったもの。 お楽しみいただけたなら嬉しいです。 ここまでご覧くださった皆様、ありがとうございました。