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第14話 次はいつ会える
煌也と過ごしたあとは、いつも、ぼんやりしてしまう。
疲れているのもそうだが、体中に、快楽の余韻が残っている感じがして、それにどっぷり浸かっているのが、良かった。
一晩中、色々な方法で虐められて、体中が性感帯になってしまったような感じになる。絶え間なく続く絶頂感。なにをしているのか、されているのかも、解らなくなるほどの快楽の虜になって、煌也に思い切り揺さぶられるのが悦くてたまらない。
家に戻った郁は、ぼんやりしながら、昨日のことを思い出しながら、寝てしまった。
そして、気が付くと、夜になっている。これで寝たら、また、出勤だ。
(あっ、そうだ……煌也と、次の約束してなかった……)
大体、煌也と逢うのは、金曜日だった。
今週も、それでいいのか聞こうと思ったら、実家からLINEが入っているのに気が付いた。
「なんだろ……」
LINEを開くと、母親からのメッセージがズラリと並んでいる。
『お正月は帰ってくると思ったのに』
『近いんだから帰ってきなさい』
『婚約したお嬢さんはどうしたの?』
そういえば、婚約していた相手に、フラれたのを思い出した。
「めんどくさ……」
元婚約者からフラれたその日に、ハプニング・バーに迷い込んで、そこで男とセックスするのにハマりました―――とは、さすがに言いづらい。
『ごめん、報告が遅れた』
『彼女にはフラれた。まだ、婚約って言っても、まだ、両家の顔合わせとかもやってなかったし、別れようって言うことになった』
『詳しい説明は、ちょっと、まだ、ショックだから、待ってて』
『しばらく、仕事も忙しいし……、帰らないから』
『土日とかも、人と会ったりしてるから、こっちに来てもらっても、無理だから』
おそらく、鬼のようにメッセージが入る未来が見えたが、とりあえず、気にしないことにした。
気分を入れ替えてから、煌也にメッセージを入れる。
『昨日は、楽しかった。今度は、いつ会いますか?』
メッセージは、既読にもならなかった。煌也の、生活リズムというのを、郁は知らない。
だから、彼が忙しくしているのか、なんなのか、よく解らない。
煌也の―――もっと、個人的なことを、知りたい気持ちもあるし、知りたくない気持ちでもある。
『プレイメイト』として始まった関係だ。
だから、身体以上の関係に発展することを、煌也が望んでいるのか、望んでいないのか―――解らない。
(じゃあ、俺は……?)
煌也と、恋人になりたいだろうか。それも、よく解らなかった。
(……だって、俺、男の事なんか、好きになったことないし……)
煌也のことは、今は、まずは『人としては好き』だ。
それと、恋人というのは、なんというか、ほど遠いような気がする。
―――もしも、これ以上踏み込んだときに、煌也が、郁を拒んだら嫌だ、と思う。興味がないわけではない。けれど、踏み込んで良いのか解らなくて、ぐるぐるしてしまう。
それで、踏み込めない。
郁に出来るのは、せいぜい、『次はいつ会えるか』聞くことくらいだった。
(また、金曜で良いから、会いたいな……)
ふと、そう思った郁は、慌てて、言い訳をした。
「そ、そうだよ……、まだ、尻尾付きのプラグとか使ってないし……」
だから、はやく、使ってみたいだけだ。
また、沢山、目一杯愛して欲しいだけ。それだけ。朝まで、ずっと、煌也のことを独占していたいだけだ。
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