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第34話 ……この後、なにか、用事はある?

 ブルー・ムーンにあるという『吊り道具』は気になりつつ。  食事は始まり、目にも美しい食事を心ゆくまで楽しむことが出来た。 (煌也の職業も解ったし……)  少し、距離が近くなったのだろうか……?  一通りの食事を終えて、デザートとして出されたフルーツまで食べ終わる。 「急に悪かったね」  出し抜けに、煌也が言う。 「えっ?」 「……郁は、休みは何してるの?」 「えっ? ……土曜日は、だいたい……眠くて寝てて」  明け方まで、ブルー・ムーンで過ごすからだ。 「……日曜は、買い物に行ったり、家で映画見たり」 「映画? 何系?」 「……いや、ちよっと、……多分、引かれると思うんで」 「え? アニメとか言っても引かないし、なんなら、俺も少しは見るよ?」 「……そういう口調で言うひとって、大抵『ドラゴンボール』は好きですとか言うヤツでしょ」 「えっ? まあ、『ドラゴンボール』は神作だけど……俺が今ハマッてるのは『ダンジョンのお嬢様は従えた魔獣でヤりたい放題ですわっ!』っていう作品だけど」 「……ごめん、わかんない……」 「えっ? そうなの? 面白いんだけどなー」 「異世界モノとか見るの、ちょっと意外」 「そういう郁は?」 「えー、俺は……、まあ、姫騎士とか出てくるちょっとエロいやつとか、読んでたけど、一番好きなのは、スプラッタだよ?」 「えっ?」  煌也の笑顔が凍り付く。 「……仕事でイライラしたあとは、スプラッタが一番かな~」 「へ、へぇ……じゃあ、今から、映画とか行ってみる? っていうのは、ちょっと、違うかな……」 「そうだね……」 「……この後、なにか、用事はある?」  煌也が、柔らかく問う。なんとなく、名残惜しそうな顔をしていた。郁も、まだ、帰宅するには早いと思っていた所だ。 「ないけど……」 「じゃあさ……、すこし、どこかで飲み直ししてから、ブルー・ムーンに行こっか?」  煌也の眼差しが、熱っぽく見える。 「……どこかで、飲み直さなくても、ブルー・ムーンで飲めば良いんじゃない?」 「それもそうだ」 「……でも、今日、本当に、お店に行くつもりで来てないから……うしろ、準備してないんだけど……」  普段、店に行くときは、あらかじめ、内部を洗浄している。  さすがに、それは必要だろう。何もナシに、したこともない訳ではないが……アナルセックスがどういうモノか、よく理解している今の状態だと、後ろを清めていないことには抵抗がある。 「じゃ、ナカ……綺麗にするところ……見ててあげるから。シャワーですれば良いでしょ?」  煌也が、にやっと笑う。  郁は、身体の奥、の芯が、ずくん、と重く、熱く疼くのを感じて、心臓が高鳴っていた……。 了

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