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第11話

 くちづけ……  秘技・国語辞典を使うまでもない。  口づけとは接吻である。 「ダメです!俺ッ、ファーストキスまだですから!」 「ふぁーすと?それは何でしょう?美味しいのでしょうか?」  この世界では、時々言葉が通じなくなる。 「美味しくありません、俺!」 「大丈夫でございます。勇者様を食べたりはしません。お持ち帰りするだけでございます」 「ヒェ!」  俺、キスよりももっとすごい事されちゃう。 「貴方様は私の真の主。これより私は勇者様専属バトラーでございます」  専属バトラー  それはつまり、  執事さんが、俺の専属執事! 「待って下さい。そういう事は、ちゃんと王様に相談しないと」 「は?」  ひそめた眉が、この世のものとは思えない拒絶を示す。 「関係ありません。所詮、奴は雇用主に過ぎません」  一国の君主様を奴呼ばわり〜 「金の繋がりなど仮初の契約に過ぎません。それとも勇者様はそれ程までに金が大事なのですか?」 「そんな事は……」 「でしょう!」  にっこり優雅に微笑む執事さんを前にしては頷くよりほかない。 「金に目が眩む者は、目先の利益に踊らされる愚者です。ほんとうに大切なものに気づかず、一生を無為に過ごすのですから。ヒイロ様、私は幸せです。生涯をかけて、我が忠誠を尽くすに足る尊き伴侶を得たのですから」 「ちょーッ!!」  なに言って☆ 「こくごじ……」  国語辞典が開かない。  開こうとした手は捕らえられたから。 「貴方様を離しません。貴方様は私のすべて。真実(まこと)の愛を捧げます。My Lord」

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