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第12話

「ストーーップ!」  バサッバサッ  羽の羽ばたく音が空に響いた。 「大声を上げられずとも聞こえますよ。……お傍にお控えしておりますので」  不意に潜めた声が耳のひだを撫でた。  フゥっと吐息が吹きかかって、 「ひゃ」  耳が熱い。 「おや?お耳が真っ赤ですよ。お熱を召されましては一大事でございます。僭越ではございますが、私が暖めて差し上げましょう」  ぎゅむ〜 「ヒャアァァ〜」 「美しき声で囀る小鳥よ、私の提案を受けて下さいますね」  ブンブンブン! 「おや?千切れそうなくらい首を振って。ご不満な点でも?正妻の座は確定ですよ。それとも、結納をまだ済ませていないからでしょうか?」  結納……  本格的なやつだ……  それに正妻って。 (俺が妻になるんだ)  男なのに。グスン。  そこはかとなく哀しい。  とにかく! 「結納はいりません」 「そうは参りません。由緒正しき勇者様をお迎えするのですから。正しい手順を踏まねばなりません」  この状況のどこが正しい手順? 「元々は俺の専属執事になるって話じゃ」  当初の内容から、かなりかけ離れてしまっている。  勝手に専属になるのはどうかと思うが、まずは話を振り出しに戻そう。 「そういうものでございます」 「………………ふへ?」 「ヒイロ様が真の主となり、私が専属バトラーになるという事は、寝食を共にし生涯を過ごすという事です。つまりこれは、伴侶でございましょう」 「エェェエエエー!」  違う。それ、絶対違う! 「私が専属バトラーとなったからには、ほかに執事を付ける事はなりません。正妻待遇で身命を賭してお守りし、この身をヒイロ様にお捧げ致します」 「捧げないで!」 「生涯ただ一人の我が番(つがい)、私だけの愛しき主様」 「話聞いてー!」  執事さん。 「ふつつか者ではございますが、末永く宜しくお願い致しますね」  キャ。

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