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第33話

 シュヴァルツは任務の最中だ。  俺は魔王を倒して勇者としての使命を遂げた。  けれどシュヴァルツは違う。国と国民を守る使命に終わりはない。魔王という脅威がなくなった今も。  騎士の矜持を持って臨んでいる。  俺……  今の俺にできるのは、この手を離す事だけ。シュヴァルツを掴んでしまった手を…… (あれ?)  握っているのは、俺じゃなくてシュヴァルツの方?  離そうとした手に重なって、大きな手の温もりが添えられている。  どうして? (シュヴァルツは急いでるんじゃ) 「戻ったら時間を作る。話を聞かせてくれ」 「はい」  何気ない一言にほっとした。そうして嬉しくなった。  いい気なものだって笑われるかも知れないけど、口数の少ない師匠の気持ちが嬉しいものなんだ。 「勇者様はシュヴァルツと仲がよろしいのですね」 「え?」 「私などはシュヴァルツのまとう気迫のオーラに恐れおののいて、何も話せなくなってしまいます。ですが勇者様は物怖じせず、シュヴァルツも勇者様を気にかけていらっしゃるように、お見受けします」 「そうなのかな?」 「そうですよ」  二人でシュヴァルツを見送った後、にこりと彼は微笑んだ。 「申し遅れました。侍従長を務めますゼフィルと申します」 「俺は勇者のヒイロです」 「はい、宜しくお願い致します」

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