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第35話
マルスさんは俺の育ての親。
父親ってところかな。血は繋がってないけれど、大切な家族で、この世界での父さんのような存在だ。
キラキラ交差した光が、色とりどりの色彩を為して落ちてくる光景を今でも覚えている。
大聖堂
どうやら俺は孤児に転生したらしい。
間もなくして……物心がついた頃である。俺が勇者候補だと分かると、大聖堂の孤児院から引き取られる事になった。
勇者としての必要な技能を身に付けるために。
一人の冒険者が、俺の養育係に選ばれた。
その人がマルスさんだ。
「といっても、マルスさんは何にも教えてくれなくて。普通に育てて、普通に遊んでくれただけなんですよ。冒険ごっことかもしました」
「おや、そうだったんですか」
「自分は冒険者なのに、冒険に連れて行ってくれた事は一度もありません。俺はいつもお留守番でした」
そう。俺は普通の子どもとして育てられたんだ。だから俺はてっきり、村人Bに転生したと思ってた。
モブの村人が王都にお引っ越しして、将来はマルスさんと一緒に冒険者になるんだと。
王都に帰って来た時は、旅人に『ここはアルファングの国です』と教えてあげる役どころで。
勇者だと知ったのは、五年前の誕生日。
突然マルスさんから、
『起きなさい、僕の可愛い坊や。今日はお前が初めてお城へ行く日だったでしょう』
と告げられた。
前日の夕飯も普通に食べて、何も言わなかったくせに♠
そうして三年間。
マルスさんの家から出て、城に入り、騎士団に仮入隊してシュヴァルツの元で、みっちり修行する事になる。
「マルスさんとシュヴァルツは双子の兄弟なんです。黒髪のマルスさんが兄で、金髪のシュヴァルツが弟。性格は正反対で、マルスさんは世話焼きで心配性で自由奔放。シュヴァルツは無口で責任感が強くて。でも、雰囲気はとことなく似ています。何が?って聞かれると分からないんだけど」
接し方は全然違うけれど、二人は優しい。
そう考えると、シュヴァルツはそっと見守ってくれている、頼れるお兄さんって感じかな?
まあ、シュヴァルツの方は鬼教官でもあるのだが。
「マルスさんとは俺が城に入ってから、一度も会えてなくて。冒険の旅に出てしまったんです。だから早く会いたいなあ……と思っています」
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