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第36話

 冒険の旅が楽しいのは分かるけど。 「そういえば、旅から帰ってくると色んな珍しいお土産くれたなぁ」  きれいなもの  ビックリするもの  真っ赤な珊瑚は、陽光にかざすとキラキラ虹色に輝いた。  伝説の一角獣の角だって言って渡してきた角は、実は大トナカイの角で噓つかれた。  スライムのクッションもあった。夏はヒンヤリ気持ち良かったな。  あと変なものも渡された。 (ガニドンの右バサミ)  あれ、普通に蟹のハサミだったよな?  蟹鍋にして美味しく頂いた。  思い出がいっぱいだ 「連絡くらいくれてもいいのに」  はぁ〜  溜め息が出てしまう。 「マルス様と仰るのですね。そういえば先代シュヴァルツが、黒髪の騎士だったと聞きますが」 「エエッ」 「突然お辞めになられて、今のシュヴァルツに称号を譲られたのだとか」  そんな話、シュヴァルツから聞いてない。 「マルスさんが先代シュヴァルツ?」 「どうでしょう。そこまでは……先代は謎大き人物でして。常に鎧兜を身に付けられて、人前で素顔をさらさなかったのだそうです。デスクに向かって事務作業を行う時ですら、兜を外さなかったのだとか」 「それは……」 「はい。黒髪だったという証言が残るだけで、何も分かりません」 「でも」 「そうです」

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