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第37話

 冒険に出ていたのではなく、騎士団の遠征に出ていたのだとしたら?  お土産は遠征先で入手した物だとしたら?  合点がいく。  しかし証拠はない。  容貌すら分からないんだ。そうかも知れない……という予想の域を出ない話で。 (シュヴァルツに聞いても、先代の事は教えてくれない。たぶん)  今まで話さなかったのだから。 「ところで、立ち入った事を聞いてしまったのではないでしょうか」  申し訳なさそうに、ゼフィルさんが肩を竦めていた。 「そんな事は全然。寧ろ楽しくお話できて嬉しいです」 「良かった。初対面なのに、色々聞いてしまいまして、失礼があったのではないかと心配してしまいました」 「俺こそ、ゼフィルさんが親しみやすい人なので、たくさん話してしまって」 「そんな風に感じて下さっていたのですね。実は私、前職は諜報員でして、聞き上手である事には少々自信を持っています」 「エエエッ、ゼフィルさんはスパイ!?」 「はい、正解です♪」  だから俺が城にいた期間、ゼフィルさんはいなかったんだ。  ゼフィルさんはにこりと微笑んで、はぁ〜と溜め息をついた。 「それがどうして、侍従長なんてものになってしまったのか。社畜は御上の人事に逆らえないのです」 「ハハハ」  異世界にも社畜は存在するんだ。 「勇者様、せっかくお話したご縁です。もし宜しければ先代シュヴァルツについて、私がお調べ致しましょうか」 「いいんですか?」

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