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第40話
綺麗だ……
名のある貴族とあって、写真から気品すら感じられる。
そして凛々しく精悍である。
(なぜ凛々しい?)
女の人が凛々しくあってはならないとは思っていない。
しかし、写真の中のすらりと立つ高身長の美しい人はどう見ても逞しい。
肩幅も女性のそれとは違う。
「次の一枚」
あれ?
これもだ。きれいな人だけど凛々しいぞ。知的な風貌で高身長。肩幅もそれなりにある。
「これは?」
凛々しい美人だ。金髪の長い髪で、だが精悍な面差しはどこか騎士のそれと重なる。
「これは?」
「これは?」
「これも」
「これも」
「これも」
ハァハァハァハァ
きれいで凛々しい美人ばかりだ。
「なかなかお気に召す人は出てきませんか。では、こちらは如何でしょう。ニューンブル伯爵のご令息です」
手渡された写真は、またもや清々しい眼差しの美しくも精悍な美人だ。
「ゼフィルさん?」
「はい」
「今なんと?」
「なかなかお気に召す人はで出てきませんか」
「その後」
「ニューンブル伯爵のご令息です」
「『ご令息』と言いましたか?」
「ええ、ニューンブル伯爵ご令息で間違いございません。お優しく、若くして領地の経営を任されていると聞いています。将来有望な方ですよ」
「………………」
「どうなさいましたか」
「……ご…ぃそく」
「お見合いは、ニューンブル伯爵のご令息になさいますか」
「ご令息って……」
勇者の国語辞典オープン!
「『ご令息とは、他人の息子を敬っていう言葉である』」
「ヒイロ様?」
「ゼフィルさん!」
「はい」
「お見合い写真、男じゃないですかァッ!」
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