44 / 172

第44話

 『自称』というところが引っかかる。  かなり引っかかる♠ (天地神明に誓って、受け様じゃない!)  しかし今は謎を解く方が先決だ。  でなければ今後の人生を、俺は受け様として過ごさなければならない。  だけど…… (さっぱり分からない)  謎を解く糸口さえないのだ。 「火のない所に煙は立たないと言うけれど」  今回に限っては、火のない所に煙が立っている。大炎上である。 「それがヒイロ様。火は立っているのですよ」  エエエッ? 「どういう事?」 「ヒイロ様の旅の途中、各地で宿をとると、必ずいつもの男性が現れて同じ宿をとるというのです」  エエエッ? 「そんな人、知りませんッ」 「しかしかなりのイケメンだという噂ですよ。記憶にありませんか?」 「な、ないです!」 「毎回ですよ。イケメンが毎回」 「ほんとうに、そんな人知りませんッ」 「ワンナイトは?」 「してませんッ!!」  なんて事言うんだ。 「残念」 「残念じゃないです」 「しかし、それ程のイケメンですので勇者様の恋人だという噂が各国に流れまして」 「エエエーッ!?」 「冷静に考えると、ヒイロ様のストーカーだったのでしょうか」 (イケメンストーカー……) 「俺が気づかなかったのなら、そうなのかも〜」  危機感知の《直感》は働かなかったんだけどな。  そこまでの危険はなかったという事なのだろうか。 「ヒイロ様に危害が及ばず良かったです。とにかく気を付けて下さいね。イケメンといえ、ストーカーですから」 「はい」  何にせよ、油断していたのも事実だ。  旅先では気をつけよう。 「という訳で。ヒイロ様は今後、受け様としての人生をお歩み下さい」  ………………へ?

ともだちにシェアしよう!