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第79話

「勇者様!今はどうか謁見に集中して下さい!」 「けれど……」  ゴゴゴゴゴゴオオー 「勇者様のお役目は謁見です!謁見が第一優先です」  兵士さん、どうしてそんなに涙目で俺に訴えかけるんだろう?  言っている事は間違いではないのだが…… 「そこまで仰るのなら。でも何かあったらすぐ言って下さいね」 「ありがとうございます!勇者様!この御恩は一生忘れません!」  ……俺、何にもしてないんだけど。  どうして、そんなに感謝されるんだろう?  兵士さん、半泣きだ。  ゴ  ん?  ところで、さっきから後ろの方で聞こえていた謎の轟音が止まったぞ。 (なんだったんだ?)  局地的集中豪雨でもあったのだろうか。 「王様、お時間取らせて申し訳ございませんでした」 「気にしなくていいよ」  クルリと振り返ると、王様が穏やかに頷いた。 「えっと、それで〜」  何の話してたんだっけ? 「君と私の旅の事だが」 「そうでした」 「新婚旅行という名目なら問題ない」 「アハハ」  王様ったら周りを和ませる冗談が上手いな。 「誰にも邪魔させないよ」  仮面の下、すぅ……っと目を細めた。 「私は約束を守るからね」

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