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第78話

 よく聞こえなかったんだけど。  背中越しに王様、何か呟いたのだろうか?  ガクガク、ブルブル  近衛兵さんが震えている。  どうして? (あぁ、そうか!)  携えている剣が重いんだ。けれども王国を守るため、普段から鍛錬を欠かさない兵士さんが剣の重量如きで震えるなんておかしいな。 (あぁ、そうか!)  王様の剣!畏れ多いんだ。  畏れ多くて、兵士さん震えてるんだな。  ……ついさっきまで何ともなかったような気がしたけど〜  しかしある瞬間、突然自覚が芽生えて緊張が走るというのは、よくある事だ。  きっと兵士さん、手に持つ王剣が国宝だって頭によぎった瞬間、震えが止まらなくなってしまったんだ。 「あの、良かったら俺が持ちましょうか」  俺なら持ち慣れているから震えない。 「いっしょに保管庫へ運びましょう」  駆け寄って手を差し出した……けれど。  ゴゴゴゴォー  ん?なんの音?  外は暴風か? 「めめっ、滅相もない!」  ガクガク、ブルブル  兵士さんが更に震え出してしまった。  俺、悪い事した? 「勇者様は謁見の最中です!私の事などお気遣いなく、謁見に集中下さい」 「あ、そうでした」  王様との謁見中だった。 「でも……」  困っている人を放っておけない。勇者だからな。 「やっぱり王様にお願いしましょうか。国の宝刀です。王剣の管理も大切だと思います。謁見中ですけど、少しなら時間貰えるかも」  ゴゴゴゴゴオオォー

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