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第84話
そうだ、リッツ!
リッツなら……
「………………」
リッツ!お前もかァッ
……リッツさえ、目を合わせてくれようとしない。
しかも、なんだよ?
その苦虫を噛み潰したような顔は。
何を我慢してるんだ。
(もしかして、笑いをこらえてる?)
俺、何か変な事した?
「ヒイロ」
不意に柔らかな声が注いだ。
「それも旅の成果かな」
「えっと~」
なんて答えればいいんだろう?
質問の意図が皆目見当つかない。
「私の性癖にドストライクだ!」
せ〜へき?
じょうへき?
(城壁)
国防……の話だろうか?
「国家のトップたる私とした事が、思わずいけない想像をしてしまったよ」
(いけない想像?)
王様はミリタリーヲタクなのだろうか。
「ええっと〜」
俺を見つめる王様の目がキラキラしている……ような気がする。仮面の下で。
「………………」
俺、何かをものすごく期待されている。
「ヒイロ」
「ひゃい!」
声が裏返ってしまった。国家のトップの期待という名の重責を背負うには、俺の背中は小さすぎる。
しかし期待は、俺の意など介入する余地を与えない。
ゾゾッ
なに?なんだ?
今、一瞬、背筋に悪寒が走ったのだが。
「これからは、私を『お兄様』お呼び」
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