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第87話

 かつて、彼の時代に勇敢なる優しき者がいた。  闇色なる世界に希望の火を灯し、希望の火を守る者がいた。  やがて魔王を打ち払い、人々の幸せを取り戻し、希望の火を次代へと紡いだ彼の者を、人々は敬意を込めて『勇者』と呼んだ。  勇者は別の時代にもいた。  また別の時代にも勇者は現れた。  類い稀なる力を生まれ持って授かった者とも、大いなる力が覚醒した者とも、異世界から召喚された者とも云われている。  しかし、どの時代の勇者にも共通するのは『勇者としての素質を持つ者』である。  他者を思いやる心  決して諦めぬ心を持つ者が、どの時代においても『勇者』となっている。  勇者は素質を用いて、いつの時代も魔王を打ち破った。  ならば、魔王は? 『魔王は何故生まれる?』  絶望をもたらす魔王は、混沌たる闇から幾度となく現れ、何故人々に絶望をもたらすのか? 「答えは簡単だよ」  仮面の下  彼は目をすっと細めた気がした。 「魔王は生まれない」  これは…… 「自然の摂理だ」  否、正確には自然の摂理から外れている。  なぜならば…… 「魔王は死ぬ事を許されない」  そう、君の倒した魔王という存在は…… 「吸血鬼(ヴァンパイア)種だ」

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