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第88話

 自然の摂理から逸脱した存在 『貴様も我をそう思うか』 (えっ……)  魔王の声が、頭の奥で……  無機質でいて、哀しみなのか、皮肉なのか、己が存在の誇示、己が存在以外の生物への卑下、圧倒的絶対的優位、選別思想。  そのどれもが当てはまり、しかし、そのどれでもないもっと別の思惑でもあったかのような……  戦いの火蓋を切るきっかけとなった、あの声が聞こえた…… 「ヒイロ!」  ハッとして見上げると、黒い仮面の顔が間近にあった。 「戦いは終わった。戦いの記憶に飲まれてはいけないよ」  仮面の下の、まるで心を見透かしたような冷静な目で、なのに声は柔らかい。 「はい、王様」 「お兄様だよ」  えっと……まだ続いてたんだ 「……お兄様」 「よろしい♡」  なに?語尾の♡?なに?  勇者の国語辞典オープンしていい? 「だめだ。自分で考えなさい」  また心読まれたような〜 「ヒイロ、お返事は?」 「……はい」  深くは考えないでおこう。 「『はい、お兄様』とお返事してくれると嬉しいね」 「はい、お兄様」 「うん。いい子だね」  頭をさすさす、大きな手が撫でた。 「魔王の灰は王国が厳重に保管する。魔王が死ぬ事はない。何世代か後に必ず蘇る。歴代の勇者が倒してきたのは同じ魔王だ」  吸血鬼種である魔王に死の概念はない。 「次に魔王が蘇った時のために、魔王を弱体化させる必要がある。魔王の体の一部である灰を我々が握る事で、その手助けになる筈だよ」  よくやってくれたね、ヒイロ…… 「チュッ」  今、額に仮面越しの唇が…… 「エエェエエエェ~~~!!」

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