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第108話

「私は察しの悪い男じゃない」  仮面の下の唇が小さく微笑んだ気がした。 「『私とは結婚とは違う形で良い関係を築きたい』、そう君は言ってくれた」  た、確かに!言ったけど! 「王たる私に本心を明かすのは、さぞかし勇気が要ったろう。しかし、その本心こそが君の誠意であると感じ取ったよ。私は君の誠意に応えたいと思う」  応えないで〜!! (……なんて言えない)  言ったら俺、今度こそ死刑だ。  それに、お兄様の優しさを傷つけたくない。  きれいごとに聞こえるかも知れないけれど。  お兄様の気持ち、否定したくないんだ。  俺を思いやってくれてるのが伝わってくるから。 (でも、それでも!)  どうやったら回避できる?  この結婚。 (あ、結婚は回避したんだ)  ならばこの愛人関係、どうやったら解消できる?  勇者が愛人関係って、どうなんだ。  しかも相手が王様って。  正確には愛人関係、成立してないし。 (けど、このままでは教科書に載せてもらえない、スキャンダラスな黒塗り勇者になってしまう)  闇堕ち勇者は聞いた事あるけど、黒塗り勇者……  王様さえ手玉にとった傾国の勇者ヒイロ (そんな称号イヤだァァー!) 「どうしたんだい?悲しそうな顔して。君の夫になっても、お兄様は兼任するよ。君からお兄様をとったりしないから、安心おし」 「うぅ」  頭ぽんぽん  大きな手が優しく頭を撫でた。 「存分に甘えるんだよ」

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