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第117話

「ご推察の通りかと」 「存在を知らしめるためにわざと」  お兄様の声がいつになく低い。王宮で何が起こっているんだ? 「……ヒイロ」  背後から声をかけてきたのはリッツだった。 「あれは王宮で極秘裏に開発されていた人形機械(ドール)。アンドロイドだ」 「やっぱり」  何となく、そんな予感はしていた。 「試作品プロトタイプではあるが、最終段階の稼働テストに入っていた」 「戦闘用か?」  ドールが戦闘用だったら……それをあそこまで大破できるなんて。考えたくないが、王国の脅威。宣戦布告ともとらえかねない事態だ。 「いや、災害救助用だ。人が入るのに困難な場所だったり、二次災害を防ぐために作られた。それだけに頑強」 「戦闘に応用できる力も持っている……」 「そういう事だ」  戦闘用ではないが、いざとなれば戦闘に配属もできる。 「それをここまで破壊されたとなっては、王国のメンツは丸潰れ……」 「しっ」  聞き役に徹していたじょうかんに静止された。 「申し訳ございません。しかし」 「ここからは、陛下がお決めになる事だ」 「はい」  俺達は静かにお兄様の動向を見守る。 「事態を軽んずるつもりはない。しかし、今は平和的に解決する時期だ」 「はっ!」  近衛騎士団の中でも特に上級とおぼしき数名が頷いた。 「かといって看過は許さん。襲撃犯を検挙せよ」 「御意!」  かツンッ!!  長槍の柄を一斉に床に打ち付けて、忠誠を示した。 「君に尋ねたい」  響き渡った硬質の空気の余韻が覚めぬ中で、声は静かに波紋を落とす。 「ヒイロ」  と、名を呼んだ。

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