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第119話
(俺……)
「エーデルフリューゲルで……」
「エーデルフリューゲル?」
そうだ。
「《高貴なる翼》エーデルフリューゲル。空を飛ぶ魔法です」
アルファング王国で新たに創られた魔法。
この魔法の名前を聞いたら、お兄様達だってきっと納得する。
執事さんの疑いも晴れるに違いない。
「アルファング王国で開発された新魔法です。その魔法で俺、空を飛んで運んでもらったんです」
「我が国の新魔法で空を飛んだ、か。エーデルフリューゲル」
「はい!」
「そんな魔法、初めて聞くよ」
「……えっ」
「人間が生身のままで空を飛ぶなんて、夢のような話だよ」
仮面の奧。
整然たる声が暗に示す。
生身で人は空を飛べない。
空を生身で飛べるのは、人ではない。
生身のままで空を飛べるのは……
《魔族》
「ヒイロ」
もう少しでその言葉を奏でようとした声に、俺の名を呼ぶ声が重なった。
「アルファング王国は、空を飛ぶ魔法なんてものを開発してなどいないよ」
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