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第121話

「急報!」  その時だった。  突如として、広間の扉が乱暴に開け放たれた。  しゃがみこむように、兵士が跪く。 「都崩れです!」  息も整わぬまま、兵士は伝令を続ける。 「都崩れが面会を求めています」 「都崩れだと?」 「はっ。日を改めるように伝えましたが譲らず、門兵と交戦になり、我が軍に怪我人が出た模様」 「死者は?」 「おりません」  良かった。  不幸中の幸いだ。 (けれど『ミヤコクズレ』って?)  なんなんだ? 「国語辞典、密かにオープン」  勇者の国語辞典には、異世界用語集も付いている。  『都崩れ』とは……  魔族でありながら、魔王傘下に属さない勢力を指す。 「人類に敵対する存在ではないが、友好的でもない。か……」  しかし、これでは……  宵闇の帳が落ちたこんな時間にやって来て、面会が認められる筈がない。  宣戦布告だ。  無理な要求の末に起こった小競り合いを口実に、何かを仕掛けてくる気じゃ。 「魔王に組さず自治を守れる勢力だ。実力は侮れない」  耳打ちしたリッツの顔は神妙だ。 「実力者であるからこそ、魔王軍は『都崩れ』という蔑称で呼んで、相手を意図的に格下扱いしているくらいだ」 「国交もないし、適したことばもないから、我々も魔王軍の呼称を使っているけどね」

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