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第129話

 脱ぎ捨てた外套を、目をすがめ、男は見下ろした。 「これでよろしゅうございますか」  口許、わずかに吊り上げる。 「我が身の潔白が証明されるのであれば、全裸にもなりますが?」 「男の裸に興味ない」 「おや?」  フッと小さく息を吐く音が聞こえた。 「女達は私を脱がせたがるのですけどね」 (ちょっ)  それが何を意味しているのか、俺にも分かるッ 「哀れだな。私を脱がせたがる者はいないぞ」 「えぇ、そうでしょう。貴方様の装束を剥げば素顔を見てしまう。誰も自分の命と引き換えにしてまで、貴方様のお顔など見たくないでしょう」 「我が素顔は安くない。素顔を見せるのは、愛を誓った愛しき者のみである。私は、素顔を許したその者を生涯愛するであろう」  仮面の視線が、チラリと後ろを顧みた。 (ちょちょっ!)  俺、まだなにもっ! 「私は娼夫ではないのでな」 「私が娼夫だとでも?」 「そのような事は言っておらぬが?そう聞こえたのであらば、貴公にその自覚があるのではないか?」  お兄様、煽ってる!

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