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第154話

 ズキンッ (なに?)  景色が反転した……かのような違和感。  ズキンッ、ズキンッ  何かが迫ってくる。  意識レベルで正常と反転を繰り返す。視界に見える景色は、何も変わってないというのに。  何かがおかしい。  ズキンッズキンッ、ズキンッズキンッ 『ほう……』  声が聞こえた。  しかし声は鼓膜を振動させない。まるで不意に脳を掴まれたかのような…… 『同類だからか?』 「相国!」  反射的に名を呼んでいた。次の瞬間、ハッと意識が我に返る。 「戻って!騎士団!」  叫んでいた。  何か、何かが……  迫っている。  何か分からないけれど。 「進んじゃダメだ!」 「遅い」  バキバキバキバキィィィッ  白銀の幹が崩壊する。  粉々に砕け散る。  銀の硬質な粉雪の舞う世界に、純白の羽が広がった。  魔力の波動が押し寄せる。  ボボッ、ボボボボボッ  朱獅子隊の穂先の炎が次々に消えていく。  視界が暗い。  なぜ?  炎が消えただけで、この暗さは異様だ。  頭上に灯っているシャンデリアの灯さえも、色を失っている。 「全員退避せよー!」  お兄様が叫んだ。

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