155 / 172
第155話
だが。
「遅いと言っただろう」
声は間に合わない。
ボボボボッ、ボボボッ
朱獅子の炎が完全に消えた。
「我、書き換える。根元たる呪いに沈め」
異変を感じ、とっさに張った騎士団の防御結界が砕ける。
ピコーン!
突如、アラームが鳴った。勇者の国語辞典だ。
国語辞典が、かつてない未曾有の異変を告げている。
ページが光って、自動で開く。
〔解呪不能〕
魔力の増幅がけたたましく、他の魔法を寄せ付けない。
これは……
〔絶対神域〕
勇者の国語辞典が伝える。
〔術者以外の魔法を強制的に無効化する空間である〕と。
魔族が絶対神域なんて!
しかし今、それは目の前で完成されようとしている。
成功すれば、無敵の禁忌魔法だ。
しかし、高位且つ熟練の聖職者が何十人がかりで、それでも成功率は50%
準備期間を100日要する。
強力ではあるが、戦闘への応用は適さない。
禁忌の絶対呪術をたった一人で、それも一瞬で。
(必要な魔力量を一人で賄っている)
魔力を操作する技術までも持ち合わせている事は、最早明白である。
絶対神域が完成すれば、相国は無敵。
誰も倒せない。
そうなってしまったら……
(騎士団は壊滅)
お兄様だって!
国の存亡すら危うい。
「我、書き換える。深淵に赴き欲するは無明」
相国の声が響く。
時を塞き止める手段はない。
ともだちにシェアしよう!

