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第165話

 キラキラ、と。  氷柱が乱舞し、猛り狂い、絡み、牙を剥く。  互いに削り、ぶつかりながらも、尚絡みつき巨大な生き物のように。  氷の蛇が喰らい合いながら、押し寄せる。 (俺、もうこの中にいる事はできない)  ここを出たって、俺にできる事はないんだ。 (だって俺は……)  でも、それでも!  グァシャアァーッ  踏み出そうとしたところへ、床が裂けた。これも頭上で猛威を振るう氷の蛇の影響?  いや、何かが変だ。  まるで俺の行動を拒むかのようなタイミングで。 「ヒイロ!」  声が聞こえた。氷の煙舞うむこうから。 「せっつくんじゃない。これが終わったら、ちゃんと僕から会いに行くから」  この声。 「約束しただろ」  そうだ、俺達は約束した。  謁見が終わったら……  『大事な話がある』と。  俺、まだ話を聞いてない。 「大事な話なんだ。こんなに大勢のお祭り騒ぎでは話せない」 「うん」 「いい子は線の中で待ってなさい」 「ちょっ、子ども扱いするな」 「じゃ、いい勇者は線の中で待ってなさい」 「あんま変わってない~♠️」 「………」 「………」  二人で顔を見合わせた。 「くまさんカチューシャ付けて、頭の上で小鳥を飼ってる勇者に反論の余地なし」 「うっ」  ごもっとも♠️

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