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第164話
色を消す氷の世界で。
じりり、と白鷲隊隊長の額に汗が浮かんだ。
どう出ればいい?
どうしたら、国王陛下を守りきれる?
どうすれば、被害を最小限に食い止められる?
どうしたって被害は出る。
槍を握り拳を固めるが、答えはまだ……
絶対絶命。
「運命の皮肉を呪うか?愚かな。羽虫には語るほどの運命もない」
声が嘲笑った。
「違う。誇りは既にこの手の中に返っている。諦めるのは、俺達の誇りを手放す事も同然だ」
一人の誇りじゃない。
騎士団一人一人が積み上げてきた誇りの重さだ。
全員分の誇りの重さを握って、騎士は戦っている。
「この身が砕けても、もう手放さない」
「ならば砕けよ」
頭上に光り輝く三本の氷柱が生き物のようにうねった。
ガキガガガキキィー
足から隊長の体が凍りついていく。
「羽虫の声は耳障りだ。喉も凍れ」
足から胴へ、そして胸へと這い上がった氷の結晶が喉に付着する。
「肺が凍る前に、生きたまま潰すのも一興か」
なんという事をッ
「やめろッ!」
叫んですぐに咳き込んだ。ここにも氷の脅威が押し寄せている。
(この場所)
線の内側は、お兄様が魔力を割いて結界を張ってくれている。
絶対神域の範囲外にギリギリ留まっているこの場所も、遂に相国の魔力の影響が出始めた。
(お兄様の魔力も体力も限界だ)
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