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第163話

 ギラギラと空が輝く。 (ここに空なんてないのに)  天井のシャンデリアよりも、もっと光る。  ガラスのようで、飴細工のようで、陽光のもとで風に舞い、崩れ散る樹氷のような……  高貴で不気味で異様な光が、サラサラと降り注ぐ。 「ただの現実だ」  ささめく雪に混じって声が舞う。 「お前達は現実を知らなさすぎた」  圧倒的な力を前に、誇りなどおこがましい。 「這いつくばれ」  強烈な上からの力に騎士達が膝を折る。  床に膝を折り、伏した騎士達から凍りついていく。 「お前達に取り返せる誇りなど1ミリもないと記憶せよ」  誇りを持つ事さえ許さない。理不尽な力の暴挙が氷の柱となって押し寄せる。  上から、下から、左右から、正面から、背後から。  次々に騎士達が氷の彫像と化していく。 「羽虫に後悔する時間は与えぬ」 「隊長ォッ」  朱獅子隊隊長が氷の彫像と変わる。  せめて膝を屈しなかったのは、騎士の意地か。叫んだ騎士も氷の彫像と化した。 「羽虫はあと何匹だ?」 「黙れ!魔物!」 「小五月蝿い羽音が耳障りだな」  紫狼隊隊長が凍りつく。  このままでは全滅する。

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