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第162話

 刹那。  先行した騎士が声もなく、一瞬で凍りついた。 「防御陣形敷け!」  異変に気付くが、間に合わない。  一人、また一人、凍りつく。  ある者は槍を構えて走り出そうとして、またある者は警戒の姿勢で、一人、そうしてまた一人と、氷の彫像と化していく。  槍の影響。  青い火を灯した槍が、騎士達を。  そうじゃない。  槍さえ、炎ごと凍っている。  氷が床を侵食する。 「隊長ッ」  背後で声が上がった。 「危険で……ス」 「お下がり……ヲッ」  後詰めの騎士達が次々に凍り付く。 「朱獅子隊!」  《ディスペル》も獅子の炎も効かない。  完全抹消結界は破られていない。ここはまだ《絶対神域》の中だ。 「満足か?羽虫共」  ガキガギガキガキィッ  翼に刺さった全ての槍が凍り、砕け散った。  そうしてキラキラと幽玄に舞う、結晶。 「希望は見せた」  声が黒くトグロを巻いた。 「だが」  男は艶然と微笑んだ。 「一瞬で全員を氷漬けにすれば、愚かな希望と薄っぺらい誇りを抱き、陶酔の中で死ねただろうが」  チロリ  赤い舌が唇を舐めた。 「慈悲は持ち合わせておらん」

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