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第1話 諦めない
バチッと激しい閃光とともに振り下ろした椅子ごと弾かれ、床に叩きつけられる。
椅子を振り下ろしたはずのドアは無傷。
対して、俺の手は火傷に擦り傷、切り傷だらけ。
加えて、酷い頭痛まで襲ってきた。
逃走防止のために張られた内向きの結界を、物理で破ろうとした反動だ。
抵抗するたびに強化される結界。
それに伴って、結界を破ろうとした反動で受ける苦痛も増していく。
それでも。
「諦めねぇよ」
あの人にもう一度会いたいから。
あの時は傷付けてごめんと謝りたいから。
あの言葉は嘘だと、俺も愛していると、伝えたいから。
だから、ふらつく体を叱咤して椅子の後脚を再び握りしめ、固く閉ざされたドアに椅子を振り翳す。
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