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1 性悪ホストに犯される

 熱いシャワーが肌を滑る。髪をかきあげて頭から湯を浴びながら、俺はホゥと息を吐いた。 (今日は予約、入ってなかったよな。まぁ、余裕――)  繁華街にあるホストクラブ『ブラックバード』のホストとして働いて、九年が経つ。今は下のホストたちの面倒を見たり、スケジュールを確認したりする、マネージャーの役職だ。ホストとしては予約がないのは問題ではあるが、売れっ子とは違ってアラサーの落ち目を自覚している自分としては、裏方に徹するのも悪くないと思っている。  予定を頭の中で確認しながらソープを洗い流していく。こんな風にシャワーを浴びている時は、誰もが気を抜いているものだ。裸で、他人の目もないこんな密室じゃ、仕方がないだろう。  だから――。  バン!  けたたましい音を立てて開いた扉に、咄嗟に反応できなかったのは、不可抗力と言うものだ。 「なに」と言う前に、乱入してきた若い男が俺の肩を押さえつけ、壁に追い込む。男はスーツが濡れるのも構わずに、壁に俺の身体を押し付けると、そのまま俺の尻を左右に割り開いた。  ギョッとして慌てて背後を振り返る。シャワーが掛かって濡れた黒髪が、やけに色っぽい。 「っ……! |北斗《ほくと》っ! てめ」  用意してあったらしく、にゅる、と窄まりにジェルが注入される。ぬるぬるした粘液が、直腸に注がれる気持ち悪さに、顔をしかめた。 「うっ……!」 「うるさい。黙れ」  酷く不機嫌そうな声が、耳元に響く。 「無茶苦茶いうな! なに考えっ……!」  抵抗しようともがくが、細身の割りに馬鹿力の北斗には勝てた試しがない。ずぷっ、と昂りが一気に挿入され、腸壁を抉る。 「ひぅっ♥」  挿入された感覚に、ゾクン♥ と背筋が震える。準備もろくにされず、予告なく犯されていると言うのに、身体は慣れすぎて、素直に反応を示した。北斗が無遠慮に腰を揺さぶる。 「あっ、あ、バカっ……! 擦ん、なっ♥」  ジェルのせいで、じゅぷ♥ じゅぷ♥ と音が響く。北斗は言うことを聞かず――聞いた試しがないが。  乱暴に腰を振り、何度も抽挿を繰り返す。片足を持ち上げられ、大きく脚を開かされ、ずぷずぷと内部を刺激される。 「あ、あ♥ あっ♥」  自然と出る喘ぎと、眦からの涙が、快感を現していた。ナカを擦られる気持ち良さに、ビクビクと勝手に尻が震える。 (くそっ……、俺も、なんでっ……)  無理矢理に犯されているのに。いつも身体は快感を覚えてしまう。抵抗出来ずに、北斗にいつも|使われる《・・・・》。  捌け口のような、乱暴なセックス。 「あ、あ……♥ ん、んぅ♥」 「アキラさぁ」  呼気を荒くしたまま、黙って腰を打ち付けていた北斗が、不意に口を開く。 「あ……♥ あ?」 「ここ、鏡つけようぜ」  北斗が、目の前の壁に手をついてそう言う。ゾクリ、背筋が粟立つ。思わずきゅうっと締め付けてしまったのを、北斗が揶揄するように笑いながら、耳を舐める。 「は。想像して感じてンの?」 「っ……、違っ……」  ゾクゾクっと、身体を震わせ、否定する。だが、北斗は見逃してくれない。  片足を持ち上げ、まるで目の前に鏡があり、見せつけるように拡げられる。肉棒が深く突き刺さった、敏感な穴の入り口を、北斗の長い指が擽った。 「こうして、見せつけられんの、想像した?」 「あ♥ ヤメっ……♥」 「それとも、僕に見られるの、興奮すんの?」  ずん、ずんと、下から突き上げられ、「はひ♥ かひ♥」と悲鳴とも呼吸ともつかない声が漏れる。腰を支えていた手が、胸をまさぐってくる。乳首を抓られ、ビクッと腰が揺れた。 「乳首、勃起させて。エロいの。……マジで、アキラ、淫乱じゃん」 「ふざ、けっ……、はぅっ♥」  ドチュッ♥ 奥を、北斗の肉棒が突く。尖端が鋭く穿つのに、俺は悲鳴を上げる。深く抉られ、一瞬息が詰まった。入り込んではいけない部分を、ぐちぐちと貫かれ、ビクビクと脚が震える。 「やっ♥ あ、っ……! 奥、ヤメっ……♥ 今から、営業っ……!」 「どうせろくに、指名、ないくせにっ……!」  北斗の動きが速くなる。壁に身体を押し付けられ、背後から突かれる苦しさに、身悶えする。  ドチュッ♥ ドチュッ♥ と、容赦なく結腸口を突かれて、膝がガクガクと震えた。 「あ、あっ♥ あ……!!」  叩きつけるように出し入れされ、パンッ、パンッと肉を打つ音が響く。その度に、俺の先端から、ドピュ、ドピュと何度も粘液がこぼれ落ちた。 「あ、あ、あ、もっ……、ダメ! 北斗っ……!」 「イケよ、淫乱っ……!」  心外な言葉に、ゾクリと背筋を震わせ、壁に向かって射精する。同時に、腹の中で熱い粘液が吐き出された。  ドロリ。北斗の出した精液が、尻の穴から溢れる。 (クソ……、多いんだよっ……)  ゼェゼェと息を切らしながら、壁にもたれ掛かる。北斗がずるんと肉棒を引き抜くと、ナカから精液が一緒に吐き出された。  太股を伝って、排水溝へと白濁が流れていく。  俺は立っていられず、床にへたり込んだ。 「はぁ……♥ はぁ……♥」  甘い息を吐きながら、北斗を睨む。北斗は水の滴る髪をかきあげて、フゥと息を吐いた。不機嫌そうだった顔は、幾分スッキリして見える。 「は。濡れたし。着替えるの面倒なんだけど」 「お前が、悪いんだろ……っ」 「アキラがシャワーなんか浴びてんのが悪いだろ。事務室に居ると思ったのに」  発言に、ムッと唇を結ぶ。事務室に居れば、事務室で犯されただろう。北斗が自分を探す理由は、それぐらいしかない。  小言を言いたい気持ちはあったのだが、虚脱感が酷い。息を吐く度に、尻から精液がこぽっと溢れる。 「じゃ、行くわ」 「死ね、クズホストっ……!」  それだけ言うのが精一杯で、ぐったりと壁に背中を預ける。北斗は暴言を無視して、そのまま行ってしまった。 (ドア、締めろバカ……)  開きっぱなしのドアの向こうから、恐る恐ると行った様子で、スタッフが顔を出す。もはや日常茶飯事すぎて、羞恥心も湧いてこない。ただ、ドッと疲れが湧いてきた。 「あ――、アキラさん、大丈夫っすか?」 「……大丈夫じゃない」  俺はそれだけ返して、ヨロヨロと起き上がった。

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