34 / 34

おまけ2 気がつくと性悪彼氏犯される

 鼻歌混じりにモップを動かす。ここ最近、大きな問題もなく実に平和な日々だ。 (そういや、来週は新人が来るんだったか。ロッカーも片付けておかないと)  ホストというのは、長々とやる職業ではないが、『ブラックバード』は老舗であるせいか、比較的在籍が長いホストが多い。今度の新人は、長く居るのだろうか。  廊下の掃除を終わらせて、ロッカールームの方へと移動する。綺麗に使うように指導しても、男所帯だからか、どうしても雑然としてしまう。 「ったく、誰だ、ヘアスプレー置きっぱなしのヤツ……。中身空じゃん。捨てろよな!」  設置されている長机の上は、誰のものとも解らないゴミや小物が多い。パイプ椅子には服が引っ掛かったままだったりする。 「ったく、アイツらは……」  文句を言いながら片付けていると、母親みたいな感覚になってくる。口うるさいオカンとか、陰口を言ってるバカも居るので、本当は辞めたい――というか、片付けろ。ちゃんとしてくれれば、俺だってオカンにならない。  空いているロッカーを整理し、床掃除をしている時だった。  バン!  突然、ロッカールームの扉が開いて、北斗が乱入してくる。 「あ? 何だよ、乱暴に開けるな。ドアが壊れるだ――」  肩を捕まれ、ロッカーに背中を押し付けられる。咄嗟のことで、反応できずに「ぐえ」と声を漏らす。 「な、なんだよ、北斗っ……!?」  北斗はチッと舌を打ち、俺の顎を掴んで噛みつくように口を塞いできた。 「んむ、んっ!?」  強引に捩じ込まれた舌が、口の中を掻き回す。同時に、ベルトが外され、手が隙間から忍び込んで来た。 「んちょ、北……」  胸を叩いて抗議するが、北斗がやめる気配がない。尻を掴まれ、ビクンと肩が揺れる。 「んぁ、っ……、待て……っ、北斗っ……あっ」  窄まりを指が擽る感触に、ゾクゾクと背中が震える。  いきなり何なんだ。そもそも、見境なくヤらないって、約束したのに。 「んぅ、はっ……、北斗、やめないとっ……」  ああ、指が入ってきた。グチグチと動かされ、こんな状況なのに、身体が反応してしまう。 「……やめないと?」  首筋に吸い付きながら、北斗が問いかける。 「……ご飯抜き」 「……」  いや、咄嗟に思い付かなくて言っただけだけどさ。葛藤すんのかよ。 「アキラが、悪いんじゃん」  言いながら耳を噛まれる。 「んっ♥ こら、馬鹿……っ」  俺が悪いって、なんだよ。 「俺、なんかした……?」  息を切らせながら、首を捻る。これ以上触られると、こっちも困る。営業前だし、そもそも店だから。 「浮気しただろ……」 「はっ……!? なに、言って――ん、あっ、こらっ」  膝までズボンを下げられ、穴を弄くられる。快楽に慣れてしまっているアナルが、指が抜き差しされる度に淫靡にうごめく。 「サイゾーにケーキあげただろ」 「はっ!? あれは、余ったヤツ、あげただけだろっ……!?」  サイゾー――才蔵というのは、出入りの業者である。金髪の若い兄ちゃんで、酒の卸をしている配送員である。それ以上でも、それ以下でもない。  今日の配達の時に、昨日貰ったケーキが余っていたので、「よかったらどうぞ」とあげただけである。 「大体、お前があのケーキ、食わないって言ったんだろうがっ!」 「知らないよ」  しれっとしているが、そもそもあのケーキは北斗が貰ったものである。誕生日プレゼントに。  北斗の本当の誕生日は、十二月二十四日である。だが、そんなイベント駄々被りの時期に誕生日イベントなどやるわけがなく、必然的に北斗の店での誕生日は別の日だ。  そして、誕生日でもないのに貰うバースデーケーキを、北斗は好まない。結果として、店の若手で消費しても消費しきれないケーキが余るのである。  棄ててしまうのも勿体ない――それだけの気持ちで、普段出入りしている業者の彼に、ケーキをあげただけなのだ。 「お前……さては、ヤりたいだけだろっ……!?」 「……アキラが悪い」 「何でだよっ」 「可愛い」  北斗が唇を曲げてそういうので、思わずブッと吹き出す。北斗と付き合うようになって、たまに言われる『可愛い』という言葉に、いまだ慣れない。七歳も歳上のオジサンに片足を突っ込んだような男に言う言葉じゃないだろう。 「笑うなよ」 「ん、ちょ……、だって、お前……っ」  肌をまさぐられ、体温が上がる。 「ケツ突き出して掃除してんの見て、我慢できるわけないだろ」 「あっ、馬鹿っ! ここではすんなって……!」  ちゅうちゅうと鎖骨を吸われ、ビクビクと肩を揺らす。その間にも、アナルを弄くる指が増やされる。どうやら、マジでヤる気らしい。 「アキラだって、我慢できないだろ?」  鼻先を噛まれ、唇を結ぶ。 (この、性悪彼氏がっ……)  北斗が指を引き抜き、自身を押し当てる。いつの間にかローションまで使って、ヌルと侵入してきた塊に、深く息を吐き出す。 「ふっ……、ん……っ♥ ぁ、北斗っ……、五分で済ませろよっ……」 「無茶言うじゃん」  ずんっ♥ 下から突き上げられ、喉を仰け反らせる。一気に深く入ってきた北斗に、背中に爪を立てて抗議する。 「ひ、んぅ♥」 「早く終わらせるから。アキラも協力して」 「あっ、あ、あっ♥」  乱暴に突き上げられ、俺は喘ぐことしか出来なかった。  なお、結局シャワー室でもした模様。
ロード中
ロード中

ともだちにシェアしよう!