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第24話 刻まれる記憶※
ホテルの夕食は、豪華なおもてなし料理を半個室で食べたので、すっかりリラックスした僕たちは予想通りナイターに行く事もなかった。最初行きたそうにしていた長谷川君が早々に酔ってしまったので、行きたがる人が居なかったせいもある。
「ナイターはコースも緩いからな。でも簡単な場所の方が怪我したりするから、案外危ないよ。」
そう言って部屋の窓からナイターを眺める立花さんに釣られて、僕も緑色の光が煌めくコースを眺めた。するとさっきの事がありありと思い出されて、フイッと顔を室内へと戻した。
すっかり酔っ払った長谷川君が、奥のベッドで目を閉じて落ちていた。僕はクスッと笑って立花さんに言った。
「長谷川君、結構お酒弱かったんですね。凄いテンション高かったから、てっきり沢山飲んだのかと思ったんだけど。」
すると立花さんは茂人さんを見て言った。
「いや、飲んでたぜ。というか茂人に飲まされてたな。きっと、邪魔しない様に潰されたんだろ。ひどい奴だよ、茂人サンは。自分の煩悩のためなら、他人を犠牲にするんだからさ。」
僕が思わず茂人さんを見ると、クスッと笑った茂人さんは僕の手を握って言った。
「ナイター行きたがると、ゆっくりできる時間が減るだろ?」
僕は目を見開いて、じわじわと顔が熱くなるのを感じた。思わずチラッと立花さんを見ると、呆れた様な顔で立花さんが手を振って言った。
「ハイハイ、茂人の貸しにしておくから。もう解散にしよ。俺ももう少ししたらサウナ入ってくるわ。こいつ、酔ったら眠くなって起きないって言ってたから大丈夫だろ。そこまで飲んでないし。ではお二人サンごゆっくり。」
僕たちは適当に買ってきた飲み物やつまみを片付けると、立花さんに見送られて部屋に戻った。
「恥ずかしい…。立花さん、全部お見通しなんだもん。」
僕がそう言って茂人さんが部屋にチェーンを掛けるのを見ていると、茂人さんが僕の手を掴んで歩き出した。
「もう少し飲む?さっきこの部屋用に少し買ったんだ。」
僕は歩き出した茂人さんの手を掴んで引き止めた。
「…さっきナイター見てたら、夕食前の事思い出しちゃった。せっかく立花さんが気をつかってくれたから、茂人さんとゆっくり…したい。」
茂人さんは僕をじっと見つめて囁いた。
「…ゆっくり、何をするの?」
僕は喉がカラカラに感じて、掠れた声を出した。
「…ゆっくり、茂人さんにひどく苛められたい…。」
途端に茂人さんは僕を引き寄せて、食らいつく様なキスをしてきた。最初から征服する様なキスは甘くて、僕はゾクゾクと震えてしまった。
「マジでヤバい。俺、めちゃくちゃ興奮してきた。楓が苛められたいなんて、はぁ、俺死にそう。ほら、これ分かる?楓を苛めたいの。」
そう言って、僕の手を茂人さんの股間に押し当てた。それはびっくりするぐらい持ち上がっていて、直ぐにでも僕に入りたがっている時の茂人さんみたいだった。僕は思わずゴクリと喉を鳴らして言った。
「さっきシャワー浴びたでしょ。来て。」
僕は茂人さんの先に立って、一枚づつ脱ぎ捨てながら窓際のベッドへと歩き進んだ。上半身裸の姿が窓に映るのを眺めながら、僕は重いカーテンを閉めた。
直ぐに後ろから僕の胸を弄りながら、茂人さんはゆっくりズボンと下着を引き摺り下ろした。僕は腰を突き出しながら、足元に絡まる服を蹴飛ばした。全裸の僕の身体を撫で回す茂人さんの両手が、悪戯に時々僕の感じやすい場所を刺激しては立ち去っていくので、僕はジリジリと焦らされて高まった。
時々身体を撫でる様に湿り気を帯びた茂人さんの硬いそれが触れて、僕は後ろを振り向いて強請った。
「茂人さん挿れて…。」
サイドテーブルから持ち上げたジェルを、茂人の美味しそうなそれにたっぷり塗りつける光景と、そのいやらしいブチュブチュという音に、僕はもう叫び出しそうだった。
ベッドサイドに突き出した僕のお尻目掛けて、茂人さんはヌチヌチと楽しむ様に擦りつけた。僕はもう、切れ切れにため息なのか、喘いでいるのか、喉から勝手に出る自分の声などコントロールも出来なくて、その瞬間を待った。
割り開いて、疼く中をズルリと押し込まれて、僕は大きく喘いで仰け反った。痺れる様な快感がもたらされて、僕の待ち望んだそれを咥え込んだ。でもそれは直ぐにもっと先の知ってしまった強い快感を求めて、僕は何度も悲鳴に似た声を押し殺しながら、その先へと茂人さんを誘導した。
「…楓、えっちだ。俺にしがみついて離さないよ。これ好きなの?」
焦らす様にヌチヌチと奥へ届く茂人さんに、僕はもう酸欠で意識も朦朧とし始めていた。
「すき、すきぃ!もうだめ、ああっ、あ、あああんっ!」
切羽詰まった様に激しく動き出した茂人さんに、僕はシーツを握りしめて、出すものも無いのにビクンビクンと絶頂に放り出されていた。茂人さんがそんな僕をそれからしばらく追い立てて、呻きながら逝くと僕たちはドサリとベッドに倒れ込んだ。
汗ばんだ二人の匂いが混ざり合って、それは僕に忘れられない記憶として刻まれていく気がした。ああ、茂人さん、もし未来に茂人さんとの道が別れても、僕はこの瞬間を永遠に胸に刻むよ。
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