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5.できればワンチャン(後)
「でも、良いよね、鋼兵の会社 。まだ新しめだと企画とかも前向きに検討してくれそうで」
タロちゃんはコロッと明るくなって、オレのアイデアではなく職場を褒めた。
そう言いながら、やっと浴槽に片足ずつゆっくり入っていく。
ヤる前にも入ったばかりなのに、全身がつかると、はあーと気持ちよさそうに息を吐いた。
「いや、資金繰りで却下されるとこまで見えた。この世に無い物作り出すって大変なんだよね」
オレもちょっとグチっぽくなりながら、座る向きを変える。
タロちゃんの両脚の間に足を入れた。追い炊きされた湯はちょっと熱いくらいになっている。
「タロちゃんのトコこそ、大手なんだからさ。持ち込みとかできる?」
「やだよ、俺頭おかしくなったと思われるじゃん。そんなの急に言い出して。合法の薬でも問題だわ」
「いや……ウソだよ」
いつもの口癖を真似するが、
「いやいや、それがうそでしょ。さっき完全に目がイッてたもん」
と指差しながら、速攻で切り替えされた。
浴槽の中に向かい合って座る。軽く膝を曲げつつ脚を伸ばした。
人間2人分の体積が加わった事で、かなり水かさが増す。水道代とガス代の節約だ。
恋人と一緒にお風呂に入るなんて、ファミリー向けの物件じゃないとできない事だ。それでもオレの身長的に、足を伸ばしきれない。
物理的にタロちゃんの下敷きになるしかなかった。
「女の子ともこうしてたの?」
脚の上に乗っかってきたタロちゃんに聞いた。もちろん女の子には紳士的だから、その時は男の自分の方が下敷きになっただろうが。
「ううん。何で?」
「えっ!」
ビックリして飛び上がりそうになった。その反応にタロちゃんもビックリする。
「えっ?」
また聞き返されて、お互いにビックリした顔のまま目と目が合った。
「タロちゃんのことだから、そういうのちゃんとしてあげてると思ってた……」
「ちゃんとって何だよ。フツー女子を先に入らせるでしょ、ドライヤーの時間とかあるし」
「へ、へえー……」
我ながら白々しい相槌しか打てなかった。経験がないから、その辺の仕様が分からない。
「……童貞」
「童貞ちゃうわ」
ぽつんと言われて、定型文で返した。本当に童貞ではないから。
タロちゃんは腕を浴槽のへりに乗せて、足を水面から持ち上げてきた。オレの膝の上に向こうの尻がふわっと乗る。
オレの肩にカカトを乗せるように上げて、膝を軽く曲げ、オレの後ろの壁に両足を付ける。首から上が、タロちゃんの下半身に閉じ込められた。
靴下ですれてまばらになったスネ毛が水をはじくのが視界の端に見える。
髪が邪魔にならないようまとめて、蛇口にかけているヘアクリップで留めた。
「髪の毛乾かしたりしてあげなかったの?」
また質問しただけで、タロちゃんは露骨に面倒くさそうな顔で見てくる。
「俺のことお母さんか何かと思ってる?」
「いや、だって……」
「して欲しいならしてあげるけど」
「…………」
何も答えなかったが、顔に出てしまったらしい。
「うそだよ」
鼻で笑われる。今のは完全にバカにされた。
「こーへいってたまにポンコツだよね、頭良いのにさ」
その体勢のまま会話を続けてくる。
「出たよ文系の偏見。オレ旧帝落ちてるし、理系ってだけで全員頭良いワケじゃないから」
下を向くとタロちゃんの股間が湯に揺れているのをつい見てしまいそうで、目のやり場に困る。
「理数全滅だった俺からすれば理系ってだけで頭良いんだよ」
返事をされて、急に、向こうが昔言っていたことを思い出した。
『男で文系浪人した肩身の狭さ知らないでしょ』
いつどのタイミングで、どんな流れで言われたのかは分からない。どんな感情だったのかも、知りようがない。
けど、タロちゃんにとってオレは、コンプレックスを刺激する存在なのかも知れない。今まで考えた事もなかったが。
それについてオレが何かフォローを入れる前に、タロちゃんが続けてくる。
「たまに何言ってるか分かんないけど。誰よメンデルって、音楽家?」
オレの言ったことを、気にはしていないらしかった。
「違うよ最初に遺伝子の法則発見した人。優性の法則、分離の法則、独立の法則……こう、両親がいて、片方ずつの要素がニコイチでかけ合わさって次の代に反映されていくっていうシステム見つけたの」
きちんと訂正して、タロちゃんの脚の間から指を使って説明した。正しい知識を思い出したから。
たまに思考回路がバグって、違う情報を結び付けてしまう事くらい、誰だってあるはずだ。わざわざイジられる事じゃない。
「ちょっと言い間違えただけじゃん。タロちゃんはたまにオレに対してのアタリ強すぎ」
“たまにポンコツ”への反撃のつもりで言うと、なぜかタロちゃんは満足そうな笑顔になった。
「俺のこれは愛情の裏返しじゃん。好きな子いじめたくなる心理」
「ランドセルでもしないわ今どき」
「こーへいは女子と喋んなかったからでしょ」
「…………」
無言で、近くにあるスネ毛をつまんでひっぱった。2,3本ひっこ抜くくらいの勢いで。
「いった!」
タロちゃんが声を上げて暴れる。
足を引く拍子に鎖骨を蹴られて、それが痛くて、オレも苦しむ。
歯を食いしばりながら、謎の笑いが込み上げてきた。
「もうさあ、なにやってんの」
自分でも呆れてしまって、そう言いながら、笑いが止まらなかった。
「分かんねー」
タロちゃんも一緒になって笑っている。
大学生の時ですらできなかった事を、ここに来てする事になるなんて予測できなかった。
四捨五入すれば30才にもなるのに、人生で初めて好きな人と付き合えて、風呂場でバカみたいにふざけ合うなんて。
この先も変わらないのかな、変わらなければいいのにな、と思ってしまう。変化しない事なんてありえないのに、夢を見たくなる。実現できるかどうかも分からない、バカみたいな夢を。
笑いが落ち着いて、さっきの体勢に戻ると、
「コンタクト大丈夫?」
とタロちゃんが聞いてきた。やっぱり優しくない事はない。
「いま入ってない。風呂入る前に外してきた」
「ああ、なんだ」
安心したように言ってから、少し首を傾ける。
「家でもあんま眼鏡しないよね」
「オレ? いや、ダサいじゃん。オレ基本メガネ似合わないんだよ」
「これ見えてる?」
タロちゃんが顔の横でピースして聞いてきた。腕も首の後ろと同じように、日焼けで途中から色が違っている。
「さすがにバカにしすぎ。だとしたらこの距離で風呂入れてるの奇跡でしょ」
高校生になった時にようやく眼科の許可が下りた。制服と、眼鏡から解放された。オシャレのつもりでダテ眼鏡をするような人間に、本当に目の悪い人間の苦労が分かるはずがない。
「デートする時に掛けてほしいって言ったらする?」
タロちゃんは何気ない感じで言ってきた。
「いや……」
あんまり不意打ちだったのでつい口癖で言ってしまったが、
「……まあ、ちょっと考える」
すぐに訂正した。
タロちゃんがニッコリ笑ったのが、少しぼやけて見える。両目の黒っぽい点があって、小さい口の両端が上がっていた。
「今度俺がフレーム選んであげよっか。誕生日……は過ぎちゃったから、クリプレにしてもいいよ。それまで続いてればだけど」
「いいね、それ。デートっぽい」
想像するだけでにやけてしまいそうになる。
ようやく実感が湧いてきた。こんな現実味のない現実感を、夢のようだと言うのかも知れない。
「眼鏡屋で働いてる友達いるから、アドバイス聞きながら……」
「あ、いや、それはいい。知らない人とこんな至近距離で喋るとかしんどい」
速攻で断ると、タロちゃんが笑顔をなくす。
「またそうやって」
呆れたとため息をつくが、いい加減に俺の苦手は分かっているはずだ。
「だって、タロちゃんが選んでくれるんでしょ」
「プロに見てもらった方がいいじゃん。ただでさえ人のセンス信用しないくせに」
「タロちゃんのためにするんだからタロちゃんのセンスでいいの。あとしれっと不穏なフラグ立てないでもらっていい? クリスマスまで続かせるから」
他愛ない話をしてるだけでじっとり汗が出てくる。こんな風に汗が出るのが嫌で、熱い風呂に入るのはあまり得意じゃない。汗と湿気を吸った髪は重くなって、クリップが滑り落ちそうだった。
でも、タロちゃんと一緒に風呂に入れる機会なんてこれまで無かったから、上がりたいと言えない。次がいつになるか分からない。
自分がどんな状態になっているか考えれば、そうするべきなのだろう。でも、言いたくなかった。
血行が促進される。いつもと違う活動で、右脳が活性化する。想像が膨らんで、止まらない。
75歳になったオレとタロちゃんの姿は想像できないけれど、もっと近い未来なら思い描けそうだった。
「タロちゃんはさ、子供欲しい? 自分で産むかどうかは別として」
「まあ、自分の子どもは見てみたいかな」
タロちゃんはのんびりと自分の肩に頭を乗せるようにして言った。
結婚願望はないけど、自分の子供は見たい。まったく別の理論であって、別に矛盾していない。
「だよね。オレもそんな感じだわ」
「そうなの? ちっちゃい子嫌いじゃん」
「んーそれはそうだけど。オレとタロちゃんの遺伝子ってけっこう最強の組み合わせだと思うんだよね。情操教育的なのはタロちゃんがしてあげて──オレはその辺もう手遅れだから。そんで、タロちゃんの苦手な理数系はオレが教えてあげる」
そんな理想的な結婚生活の途中で、タロちゃんが複雑そうな顔でオレを見ているのに気づいた。さっきの薬の件と言い、タロちゃんはたまに変な顔でオレの計画をさえぎる。
「何? オレ何か変なこと言ってる?」
「……そういうの他の人に言っちゃだめだよ?」
「え? いや、当然じゃん。タロちゃんに言ってるんだけど」
タロちゃんもたまに変なことを言う。
「……もし結婚したら、佐々木鋼兵になってくれる?」
そんな変なタロちゃんが、少しだけ意味深なことを聞いてきた。何かを匂わせたいみたいだが、“鈍感な”オレにはそれを察する能力が残念ながら無い。
「いいよー、オレ別に名字に愛着ないし」
あっさり返事をすると、真面目だった空気を切り替えて、いつもの雰囲気に戻る。
「ちょっと珍しいのにね。その人数減らしてもいいのかな」
「いとこのお兄ちゃんが女の人と結婚してるから大丈夫。オレが佐々木になったところでプラマイゼロ」
「長男がそんな事でいいのー?」
「お母さんはもうオレのソッチ関係諦めてるし。公立行ってストレートで卒業した時点で親孝行終了してる」
すると、タロちゃんがまた何かに反応したマウスみたいになる。傾いていた首をまっすぐに戻して、姿勢も少し起こして。
「あ。いま思い出したけど、こないだ送って貰ったお菓子おいしかったね。白桃の」
何のことかはすぐに分かった。オレの実家から送られてきた荷物のことだ。
今回届いたのは、白桃あんの入ったまんじゅうだった。8コも入っていたのに、タロちゃんは1コずつ両手で持って大事そうに頬袋に収納していた。
「あれお母さんがタロちゃんにって送って来たんだよ。ギュウギュウに入っててオレの頼んだ荷物潰れてた」
タロちゃんは桃が好き。旬にしか出回らない桃単体も、それを使ったお菓子も、缶詰に入ったシロップ漬けの黄桃か白桃も好き。
ルームシェアを始めてから、オレのお母さんが手作りのケーキを送って来た事が、1回だけある。誕生日でも何でもない。ただの親心というやつだ。
実家の近所の農園の桃を使ったパウンドケーキで、どう見ても1人では食べ切れない大きさだった。
出してあげると、タロちゃんは超がつくほど感激していた。
鋼兵も作れないのと聞かれて、スイーツとか無理に決まってると答えたら、すごくしょんぼりしたほどに。
受け取りが大変だからクール便は送って来ないよう実家に言ったと知ったら、もっとがっかりしそうで、いまだに言えていない。
ついでにオレのお母さんがタロちゃんのことを勝手に「モモタロちゃん」とか呼んでる事も、
『モモタロちゃんによろしくね』
と電話の最後に毎回言う事も、伝えられていない。
オレも時々言いたくなるけど言えない。名前をイジると思った以上に怒るのを知っているから。
「そうなの? うわー、知らなかった。何かお礼しないと」
そんな桃が好きな汰郎ちゃん、略してモモタロちゃんは、軽そうに見えて結構リチギだ。
年賀状やお歳暮や大人の付き合いみたいなのを、きちんとやるタイプ。結婚式の招待状にも、丁寧に返事を書いて、“ご”はどっちも二重線で消していた。会社用のスーツじゃない礼服も持ってるし、ちゃんとしなきゃいけない時の行動が早くて、小難しいご挨拶の言葉もすらすら言える。日本の国歌もフルで歌えるし、たぶん国の花や国の鳥も知っている。
名刺交換や電話対応、乾杯の時の暗黙のルール、社会人としての常識やマナースキルが必要な業種だから。童顔で明るい雰囲気と、そんなマジメさのギャップに萌えた、昔気質な先輩や上司や取引先からウケがいいのだろう。
「いいっていいって」
手を振って断った。向こうが好きで送って来ているだけで、義理を感じることはない。
「こっち、呼んであげたらいいのに。浅草観光とか喜ぶんじゃない? 上野とか、銀座とか、お台場とか。横浜もいいね」
楽しそうに提案してきたが、すぐ却下する。
「いやオレが死んじゃうよ。観光客多すぎでしょ」
「俺が案内してもいいよ。鋼兵ママとのデートプラン考える! 他の家族も来るならもっと皇居とか……むしろアキバとか池袋の方が楽しめたりして」
タロちゃんの、人と一緒に何かをしたいという情熱が一体どこから来るのか。本人にも分からないだろうし、この謎はオレには恐らく永久に解けない。
「あー……どうぞしてやってください」
タロちゃんのテンションについて行けなくて、なげやりに返事をした。他人の家族にまで思いやりを持てるタロちゃんはやっぱり、基本的には優しい。
「ウチの家族マジでタロちゃんのこと気に入ってるから。実現したら逆にオレがジャマみたいになりそう」
顔に汗が垂れてくるのを手でこすりながら言った。
長男の彼氏だと言っても、違和感なく溶け込んでしまえそうなタロちゃんを、いつか本当に家族に出来たらいいのに。
そこまで考えて、ふと気がついた。
「いや、てか、待ってよ。先にお母さんたちとデートしようとしてんじゃん。オレ差し置いて」
「あっ、気付いた?」
タロちゃんはケラケラ笑う。
「気付いたわ、あっぶな。何サラッとぶっ込んで来てんの、ダメだよ」
「ちぃっ」
悔しがるように指を鳴らすが、
「ちいじゃねーわ」
と返すと、また楽しそうにヘラヘラ笑った。
ただ、これだけ盛り上がっているが、本人の実家の話は出ない。佐々木汰郎は知り合った時から、あんまり自分の家族の話をしなかった。
オレが聞けば答えるのかも知れないが、それができないからコミュ障なのだ。
「佐々木に貰うの申し訳ないなー」
タロちゃんがあんまり申し訳なくなさそうに言う。膝を曲げて後ろに倒れるようにしながら、湯に沈んで。ぐぐぐと腰が押し付けられても、ヤラシイ気持ちにはならなかった。
「別姓もアリだね。何にも名義変えなくていいし」
向こうの体を膝で支えながら答えると、
「同性婚もそうだけど、夫婦別姓も他人事じゃなくなっちゃった……」
足だけで安定して、たゆたゆと湯に浮かびながらつぶやくタロちゃんの声まで、湯気に浮かんでいるようだった。
こんなリラックスした姿を見せてくれるとは思わなかったし、付き合えて良かったと改めて感じる。これまでの日常が、がらりと変わってしまった気さえする。
「ね。オレと付き合ったら発見があるでしょ?」
そんなことを言ってしまえるオレは今、そうとう浮かれている。
まだほとんど見えてこない、タロちゃんの育った佐々木家。それを、そこにいる人たちを、いつか知っていく事になるんだろうか。オレを紹介してくれるんだろうか。そんな事まで考えるくらいに。
今すぐとは言わない。でもこれからは、オレの中にあるタロちゃんに関する情報フォルダを、もっと充実させていきたい。一時的じゃなく長期的に、タロちゃんのために脳のストレージを確保したいと、今はガチで思っている。
タロちゃんが急に体を起こして、浴槽のへりをつかんだ。
「うそだよ。俺相変わらず結婚願望ないから」
いつものようにクールに言い残して、風呂から出て行こうとする。それが、向こうなりの照れ隠しだという事くらい、いい加減分かる。
「タロちゃんも素直じゃないよね。その気もないのに、自分の名字になってくれるなんて聞かないでしょ」
普段の仕返しに、わざと煽るように言った。
何を伝えたかったのかまでは分からない。でも、タロちゃんのことだけをずっと見て来たオレは、言えない本心をかかえていたのだって見抜けた。覚醒したオレの能力は、ここだけに反応するシステムなのかも知れない。
体を流しもせず出ていってしまったタロちゃんが閉めかけたガラス戸の隙間から、じろっと睨んでくる。
「……そんだけ分かってんならコミュ強でしょ」
コミュ力は高いが、いつも嘘をついては人をイジる側なので、イジられるのには意外と慣れていない。
「違うよ、彼氏だから分かんの」
追いかけるように立ち上がると、急に視界が狭くなった。
立ちくらみがする。ただでさえのぼせたようになっているのに、動いて血圧が下がったせいだ。調子に乗りすぎた。
「あっ、ヤバ……」
目の前が暗くなり、足元がふらついて、湯に取られそうになる。ヤバい事は分かるのだが動けない。
前かがみになって、浴槽のへりに手を突いた。肩に垂れた髪からヘアクリップが滑って落ちていく。
カシャーン! とプラスチックのぶつかる嫌な音がした。
すぐに、タロちゃんが戸を開けて戻ってくる。
「のぼせちゃった? 俺に」
つまんない冗談に言い返す余裕が、今のオレには無い。
「…………」
頭を下げて、目を閉じながら気分の悪さに耐える。体を流れた湯が股の下に筋になって落ちる音がする。
いつもの「うそだよ」は聞こえなかった。
タロちゃんが近くに来るのが分かる。
「やっぱり出て行かなくて良かったでしょ。俺がいなかったらどうやって生きてくの」
「ん……」
何とか返事をして目を開けると、タロちゃんが両腕を伸ばして体を支えてくれた。
オレは今回もタロちゃんに肩を借りて、風呂場から出る羽目になった。
のぼせた原因のはずのタロちゃんに助けてもらうのは、何だか理に適っていない。
でも、それも悪くない気がした。
理屈とかそういうのを抜きにして、一緒に居たいと思うのが、感情なのだろう。
「……俺のいない場所 で倒れないでね」
そう言うタロちゃんからは、多少バカにされても、いじめられても、大事に思われてるのが伝わってきた。
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